千葉工業大学 小笠原研究室(情報変革科学部 認知情報科学科/社会システム科学部 プロジェクトマネジメント学科)
大学および学外での活動の中から、講義、業務、研究などに関連した話題を中心に発信します。


67. 小笠原研5回目の卒業生

3月22日(金)に学位授与式が行われました。小笠原研5回目の卒業生が社会に旅立ちました。女子3名を含む、全部で11名でした。ゼミ長を中心にまとまりのある学年でした。研究室のLOVOTたちをとてもかわいがってくれました。

11月にゼミ合宿に行ったのも良い思い出です。富士急ハイランドにも行きました。いつもとは違う姿を見ることができて新鮮でした。

5回生(1) 5回生(2) 5回生(3) 5回生(4) 5回生(5)

卒業研究に関して言えば、ばらつきはあるものの、全体的には計画的にしっかりと取り組んでくれました。よい成果を出してくれた研究もあり、その成果はソフトウェア・シンポジウム2024でも発表する予定です。卒業研究の一覧はこちらを参照してください。

最後の懇親会も楽しかったです。別れはいつも寂しいですが、新しい生活の始まりでもあり、嬉しさもあります。みんなが元気で頑張ってくれることを願っています。

Heaven helps those who help themselves!
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66. 沖縄PMセミナー2024に参加!

活動にも書いたのですが、日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)主催の「沖縄PMセミナー2024」に参加してきました。一番の目的は、佐藤達男先生(広島修道大学 経済科学部経済情報学科)の基調講演「「次世代のプログラム&プロジェクトマネジメント ~PMの新潮流を沖縄の視点で考える~」を聞くことでした。基調講演は、当日の9:30-11:00で、素晴らしい内容でした。分かりやすいし、説得力がある。しかも、スライドの使い方がうまくて惹きつけられる。真似したい、と思いました。

基調講演のあとの発表もすべて面白く、あっという間に夕方になってしまいました(講演一覧は活動を参照してください)。沖縄まで来てよかったと本当に思いました。当然、夜は海さん~市での懇親会で盛り上がりました! PMAJの方々、沖縄の方々と知り合えたのが何よりもよかったです。旅(仕事だけど…)には出るものですね。

いつか、ソフトウェア・シンポジウムを沖縄で開催したいと思っています。今回、自分としては初めて沖縄のイベントの参加したのですが、普通に開催できるということを実感しました。今度、ソフトウェア・シンポジウムの実行委員会で話をしてみようかなと思ってます。

楽しかったので、沖縄で撮った写真を何枚か貼り付けておきます! PMセミナーとは関係ないのですが…

沖縄1 沖縄2 沖縄3

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65. 国際P2M学会秋季研究発表大会で発表奨励賞を受賞

ちょっと前の事なのですが、2023年10月29日(日)に同志社大学で開催された「第36回国際P2M学会研究発表大会」の研究発表で、博士課程の上條さんの論文「ビジネスアジリティーの向上を目的としたアジャイルポートフォリオマネジメントへのP2M理論の適用」が発表奨励賞を受賞しました!

この論文の概要は次のとおりです。

ITの急速な進化により新興のデジタル企業がITを駆使して新たに市場に参入し創造的な新しい価値を素早く投入することで伝統的な企業や市場を破壊するという「デジタルディスラプション」が起きている。この時代において多くの企業は、デジタルトランスフォーメーション(DX)により新たな価値をいかに素早く市場に投入するかに企業の存続がかかっている。DXに対応した開発手法としてアジャイルは普及してきているが、アジャイルそのものは、ソフトウェアの開発手法であるためビジネス的な観点でビジネスアジリティーを加速させる仕組みが必要となる。そこでアジャイルポートフォリオマネジメントという新たな取組にP2M理論を適用し有効性を検証した。


企業での実践に基づいた内容なので、課題もなるほどなと思う事であり(つまり、いろいろな組織で同じような問題が発生していると思われる)、解決策のアプローチも分かりやすいところが良かったのだと思います。地道な活動ですが、このような論文を残していくことが、いつかどこかで誰かの役に立ち、そこからまた発展する、というサイクルにつがなるのだと思います。おめでとうございます!
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64. ソフトウェア信頼性研究会(FORCE2023) を開催

今年も例年どおり12月にソフトウェア信頼性研究会 第17回ワークショップ(FORCE2023)を開催しました。

今年は12月16日(土)-17日(日)に、大阪の大阪上本町駅近くの会場で開催しました。基調講演は田中康さん(有限会社ケイプラス・ソリューションズ、奈良先端科学技術大学院大学/大阪芸術大学客員教授)に、招待講演には大平雅雄先生(和歌山大学)にお願いしました。田中さん、大平先生の講演は、ともに面白く議論が盛り上がりました。やっぱり対面形式の方が集中力を持って聞けるので(私の場合)、とても充実した時間を過ごすことができます。学生のみなさんの発表もとても興味深い内容でした。面白かったです!

以下は、田中さんと大平先生のタイトルと概要です。

■タイトル
 Are you building a right thing?
 ソフトウェア信頼性とPRePモデルによる現実世界の設計
■講演者:田中康氏
 有限会社ケイプラス・ソリューションズ
 奈良先端科学技術大学院大学/大阪芸術大学客員教授
■概要
 「正しいもの」をどのようにして作るか。これまでの要求工学のアプローチを批判的に振り返った後、我々が作るソフトウェアを人工物システムとして捉えることによって「目的」の重要性と、システムを設計する際のモデル化の意味を再整理する。その上で、「正しいもの」を作るためのステムの目的定義とモデル化の方法として、講演者の考案したPRePモデル(概念構造モデル)について具体例を交えて紹介する。最後に、最新の取り組みとしてGSN(Goal Structuring Notation)をPRePモデルの前段に適用した事例を紹介する。
PReP model:PRePモデルで、あなたのビジネスを成功に!

■タイトル
 リポジトリマイニングによる技術的負債の分類と検出
■講演者:大平雅雄氏
 和歌山大学システム工学部教授
■概要
 情報システムの長期運用・保守の過程で導入される技術的負債(低品質な設計や実装など)は,機能追加やシステム改修作業の妨げとなるため,近年のDX(Digital Transformation)の文脈において特に注目される研究対象となっている.本発表では,技術的負債に関する研究動向を概説するとともに,現在取り組んでいるリポジトリマイニングによる技術的負債の自動分類手法および検出手法についてそれぞれ紹介する.


当日のプログラムはここを参照してください。私も「プログラミングとローコードと生成AIによるWebアプリの開発」というテーマで発表しました。発表後の議論も活発で、今後のプログラミングとか、ソフトウェア開発について考える事ができて楽しかったです。発表資料はここからダウンロードしてください。

研究会終了後、奈良さん、三輪さんと一緒に鶴橋まで行き、焼肉を食べてから帰路につきました。美味しかったです。

来年も今年と同じ時期に開催の予定です。来年はもう少し参加人数を増やせるように頑張ってみたいと思います。
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63. ProMAC2023 (Hanoi, Vietnam) に参加

プロジェクトマネジメント学会(PM学会)主催の ProMAC2023(15th International Conference on Project Management) に参加してきました。

海外での開催は、2019年に Yangon, Myanmar で開催した ProMAC2019 以来、4年ぶりでした。ベトナムのハノイには東芝に在籍していたころ、数回出張したことがありました。その頃と変わらず、道路を走るバイクの数は多く、熱気(と言うのとはちょっと違う感じですが、うまい表現が見つからない…)を感じました。

今回は、FPT Software F-Ville 2 で開催しました。FPT Software の方々の献身的なサポートもあり、大変盛り上がった4日間(最後の1日は Fact Finding Tour)でした。私の研究室からは3年生の学生が発表をしました。初めての国際会議への参加でしたが、しっかりと発表できました。

Grand K Hotel Suites Hanoi から会場まではバスで通いました。私は行事委員なので、開催前日に会場に行き準備作業をしてきました。その帰り道、あと少しでホテルに到着というところで、乗っているバスと乗用車がぶつかってしまい、その場でバスから降りなければならない、という状況になってしまいました。バスを降りてから撮った写真を載せておきます。こんな事もありましたが、本会議の3日間はたくさん議論をし、いろいろな方々と話すこともでき、楽しい時間を過ごせました。来年もぜひ参加したいと思いました。

ProMAC2023(1) ProMAC2023(2) ProMAC2023(3) ProMAC2023(4) ProMAC2023(5)
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62. PM学会秋季研究発表大会で論文奨励賞を受賞

PM学会主催の「秋季研究発表大会」を開催しました。今回は、PM学会の2つの委員会の役割もあり、いろいろと新しい経験ができました。楽しかったです。

3年生の二人が発表しました。タイトルは「ChatGPTを用いたWebアプリケーションの開発」です。夏休みに入ってから投稿原稿を仕上げ、当日の発表の準備を進めてくれたました。内容はWebアプリケーションが開発できました、ということにとどまっていて、プロジェクトマネジメントとの関係性などに関する分析や考察はできていないので、物足りない部分もありました。しかし、実際にChatGPTを使って開発ができ、その内容と昨年の3年生が開発したシステムとの比較などもしていることが一応評価され、「学生研究発表賞奨励賞」を受賞できました。大学から発行されている NEWS CIT 2023年10月号(CIT:Chiba Institute of Technology)にも記事を載せていただきました。嬉しいです!

論文奨励賞受賞

ChatGPTを用いて作成したWebアプリケーションは「アルバイトのシフト管理システム」です。アルバイトの人は、自分の希望するシフトを他のアルバイトの情報を参考に登録します。シフトを作成する管理者は、アルバイトの方々とう登録した情報を元にシフトを作成します。開発したシステムは、研究室のサーバにアップしましたので(上記のリンク)、興味のある方はアクセスしてみてください。
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61. 今年の夏休み…

昨年の9月のブログは「49. 忙しすぎた夏休み」でした。今年も夏休みが終わりに近づき、9/15(金)から後期の授業の開始です。今年の夏休みも何だか忙しかったです。一つは、PM学会の秋季研究発表大会が夏休み中にあり、その準備で少し時間がかかりました(とはいえ、この準備にほとんどの時間が取られていたというわけでもありません)。それ以外は一体何に時間を使っていたのだろう、と振り返ってみても、これといったものは挙がってきません。忙しいふりをしているだけなのか…

まあ、おそらく、そのような面もあると思いますが、実際には、受託研究、学会活動、補講、イベント対応などなど、細かな作業が多かったという気がします。あと、家の事情で実家に泊まる日もあったので、それも何となく落ち着かないという原因だったのかもしれません。

こんな感じで忙しいというか、何となく落ち着かない日々が続いたのですが、仕事の合間や実家に泊まっている時に、ギターをよく弾いてました。基本的には70年~80年代のフォークで暗めの歌が多いのですが、ギターを弾いて歌を歌うのはリフレッシュにもなるし、歌詞を覚えて楽譜なしで歌えるようになるとそれなりの達成感も得られます。今年の夏は3~4曲くらい習得しました。合計で12~13曲くらいまできたので、まずは、20曲を目標に頑張ってみようと思っています。

毎年、夏休みに入る前には、「今年は ** を勉強しよう」と思うのですが、達成できない事が多いです。今年もダメでした(^^;) でも、何曲か習得できたのでよいことにします。今回は、何だかグダグダな内容になってしまいました。あ、いつもか…
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60. 嬉しい問い合わせ!

今年の5月末に、海外からメールが届きました。私の過去の論文を読み、興味を持ってくれたようです(東芝に在籍した当時の論文で、1995~2000年頃に国際会議で採択されたものでした)。その後、何通かやり取りをして、9月からオンラインで定期的にゼミをすることに決めました。来年の3月に、千葉工業大学の修士課程を受験する予定です。それまでに、研究計画書を書きあげ、入試(口頭試問)の対策を練ることにしました。素直に嬉しいです。彼女が研究者としての道を開けるように努力したいと思います。来年4月から一緒に研究できることを楽しみにしています!

■届いたメール

Dear Professor Hideto Ogasawara,

I hope this email finds you in good health and high spirits. My name is ****, I am considering applying to your department's master's program. I am writing to you with great admiration for your work in the field of Software Quality. I recently came across some of your research publication abstracts. For example Experiences with program static analysis, Experiences of software quality management using metrics through the life-cycle.

Allow me to provide a brief background about myself. I am a graduate of **** University in ****, where I completed my Special Degree in Bachelor of Industrial Information Technology.

Since I have 4 years of Industrial experience as a Software Quality Assurance Engineer your expertise in Software Quality control has deeply resonated with my own academic interests and aspirations. Therefore, I believe that your guidance and mentorship would be invaluable as I embark on my own research journey.

To provide you with more information about my academic background, research experience, and achievements thus far, I have attached my CV. If there are any additional materials or references you would like me to provide, please let me know, and I will be more than happy to furnish them promptly.

I would be interested to hear about the most recent work in your lab, and I'd be happy to answer any questions or to talk if more information would be helpful.

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59. kintone、使ってみた!

kintone の広告が好きで、どのくらいすごいのか知りたいと思ってました。
「前職では表計算の管理に難儀して...」30秒
「表計算使ってた時は、天文学的な時間を要してました」30秒
「Nice」30秒

今回、3年生の前期の講義に「ユーザ要求とシステム設計」があり、そこで、使ってみました。ただ、使ったのは後半の2回の講義だけだったので、ちょっと消化不良という感じでした。具体的には、昨年の3年生がPM演習で開発した研究室書籍管理システムを kintone で作ってみました。

研究室書籍管理システムは、PHPファイルが6つ、CSSファイルが3つで、総行数は約700行でした。3年生はそこそこ苦労しながら開発してました。kintone で作ってみると、それはそうだろうなと思いますが、あっという間に作れました。さらに、裏にワークフローがあるので確認や承認の機能もすぐに作れます。また、メールも発信できるので、通常のWebアプリケーションで開発したいと思うことはすぐにできると思います。

ローコードツールの代表である kintone を使ってみましたが、よく出来ているというのが感想です(偉そうな言い方でごめんなさい)。ムダな開発をなくす、いろいろな業務プロセスをほぼ同じにする、という意味ではもっと広がればよいと思いますが、お金がかかるのですよね。もしかすると、GenerativeAI(ChatGPTなど)はこういった状況を打開する技術になるかもしれないと思いました。
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58. SS2023 in 仙台、楽しかったです!

6月12日(月)~14日(水)に、ソフトウェア・シンポジウム2023 in 仙台を開催しました。多くの方々の協力のおかげで無事開催できました。3日間、本当に楽しく、あっという間でした。

昨年は、音声に雑音が入り、映像が途中で切れてしまうというトラブルがありました。そこで、今年は、音声については、会場の音声設備は使わず、ヤマハのスピーカーフォン(YVC-1000)にマイクをつなげることにしました。大会場ではなかったので、YVC-1000 で十分にいけました。また、カメラ(ソニーのVLOGCAM)も途中で切れてしまう現象が発生していたのですが、PCと配線の相性などを事前に確認し、途切れることもなく配信することができました。活動に記載した内容も参照してください。

今回は、当然と言えば当然なのですが、Generative AI に関する発表が多かったです。最優秀発表賞は、酒匂さんの「Generative AI とソフトウェア開発への応用の試行」でした。また、最優秀論文賞は、東芝時代に大変お世話になった深谷さんと関さんの論文「テストからはじめよ」~忍者式テスト20年の実践から~でした。発表スライド発表原稿(文字起こし)もアップしてありますので、参考にしてください。とてもとても面白く、興味深い内容です。

SS開催後、悲しい知らせが届きました。中野先生が2023年7月2日(日)の朝、息を引き取りました。SS2023でも、治療中の影響はありましたが、元気に過ごしていました。初日の基調講演の時にさりげなく部屋を抜け出し、廊下で次のセッションのためにスピーカーフォンとカメラのセットアップをしてくれてました(部屋の予約開始時間まで時間が空いていたため)。2月に開催したSEAフォーラムにも登壇し、デジタル庁の村上グループ長の講演から話題提供をしていただきました。Youtubeの動画もあります。喉の調子が悪かったので、テキストを読み上げる形式での発表でした。とても面白い内容でした。特に、「公助、共助、自助の共助の重要性」「プレイヤの存在」「インクルーシブ・スクエア」というところは心に残りました。いつも笑顔で、仕事も早く、経験や知識も豊富で、頼りになる中野先生ともう会えないのは本当に寂しいです。
中野先生(1) 中野先生(2)

来年は長崎で開催します! 日程は今年と同じで曜日だけが違います。2024年6月12日(水)~14日(金)の3日間です。来年、長崎で会えることを楽しみにしています! 全員集合ということで(誰に言っているのかよくわかりませんが…)!
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57. 来年度から所属する学部・学科が変わります!

来年度、千葉工業大学では一部の学部・学科が再編します。今までの情報科学部(情報工学部、情報ネットワーク学会)と社会システム科学部(経営情報科学科、プロジェクトマネジメント学科、金融・経営リスク科学科)が融合し、新しく2つの学部となります。2つの学部は、情報変革科学部と未来変革科学部の2つです。それぞれの学部の学科は次のとおりです。

情報変革科学部 未来変革科学部
  • デジタル変革科学科
  • 経営デザイン科学科
私は、認知情報科学部の所属となります。当然、プロジェクトマネジメント学科(PM学科)にも学生がいますので、PM学科の学生が卒業するまでは2つの学科を受け持ちます。PM学科の学生も大好きで、先生方も素晴らしい方々なので寂しい気持ちもありますが、新しい事が始めるというワクワク感もあります! すでに、新しい学科の先生方とは密にコミュニケーションをとって来年に向けて準備を進めています。PM学科の学生に対して責任を持って卒業まで対応するのと並行して、新しい学科で新しい事にチャレンジしていきたいと思います。認知情報科学科のWebサイトを公開しましたので、興味のある方はリンクをクリックしてみてください!。
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56. 大学に来て6年目が始まりました

大学に来てから5年が過ぎ、4月から6年目が始まりました。今年も入れてあと8年(だと思う…)です。月日が過ぎるのはあっという間で、もう5年が過ぎてしまったかという感じです。来年は改組(学部・学科の再編)もあり、情報科学部(2学科)と社会システム科学部(3学科)が、情報変革科学部(3学科)と未来変革科学部(2学科)となります。基本的に私の専門が変わることはありませんが、講義や研究の内容を見直したり、新たな領域にチャレンジすることができるよいチャンスだと思っています。

下の図は、放送大学の講義として開発した 数理・データサイエンス・AI 専門講座『ソフトウェア開発への応用』(8回シリーズ) の1回目の講義で説明した内容です。ソフトウェア工学における定量的品質管理の側面では、見えないソフトウェアを定量的に管理することに注力してきました。これからは、「リポジトリマイニング」や「ビックデータ分析」に関する取り組みが広がってくると思います。私も、今後、この領域にも力を入れていきたいと思っています。

ソフトウェア工学のこれから
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55. 小笠原研4回目の卒業生

2月8日(水)に、小笠原研究室4期生の卒業研究発表会がありました。プロジェクトマネジメント学科では、3年生になる時に研究室の配属先を決めます。毎年、3年生のオリエンテーションの時に配属希望を取ります。今回卒業の小笠原研究室4期生の時は、1.3倍程度の応募がありました。

小笠原研4期生の2年間は基本的に対面でゼミを行いました。新型コロナに感染してしまった学生もいましたが(私も感染してしまいました…)、新型コロナの影響で何かが大きく制限されたということはなかったと思います。あ、でも、研究室で食べたり、飲んだりということは出来ませんでした。それがちょっと残念でした。卒論発表会後にはみんなで飲みに出かけました。とても楽しかったです。

研究室に配属になってから卒業までの2年間はあっという間でした。3~4年生の活動については、卒業生に対するブログを参照してください。小笠原研究室4期生9名の研究テーマは、次のとおりです(研究テーマの概要はここから参照してください)。

  • ABC分析を利用したサブスクを取り入れたビジネスの提案
  • IoTデバイスを用いた快適度向上の提案
  • 第三者が「見る・観る」ことによるレビュー改善方法の提案
  • ペットロボットを用いたロボットセラピーのパッケージ開発に関する研究
  • 都道府県魅力度ランキングに関する研究
  • Google機能を用いたICT教育の仕組みの提案
  • 査定者の査定能力向上を目的としたトレーニングの提案
  • 音楽アーティストを対象にした情報発信ツールの活用方法に関する提案
  • 背景音楽が与えるグループワークに対する作業効率向上の実験
卒業研究で大きく伸びた学生、最後に仕上げた学生、なかなかうまくいかずに苦しんだ学生と、いろいろなパターンがありましたが、みんな明るく、素直な4年生でした。これから、とにかく頑張って欲しいと思います。これからの人生が素晴らしいものでありますように!

Heaven helps those who help themselves!
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54. サーティファイIT3委員会合同会議での発表

数年前からビジネス能力検定サーティファイ情報処理能力認定委員会の委員をしています。2/28(火)にIT3委員会合同会議があり(情報処理能力認定委員会、ソフトウェア活用能力認定委員会、Web利用・技術認定委員会の3つの委員会)、“大学におけるプログラミング教育の現状と日本語プログラミング言語「なでしこ」を活用したプログラミング教育の紹介”というタイトルで発表してきました。

大学におけるプログラミング教育の現状については、現在各大学で取り組まれている「AI戦略2019と数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」に関連した内容を説明し、その次に、「社会の課題を解決できる情報技術人材の育成」の取り組みである enPiTの紹介をしました。また、enPiT での取り組み結果などを論文としてまとめて発表する場である rePiT:実践的IT教育研究会 で発表されている論文などを紹介しました。

上記の説明を10分くらいで行ったあと、15分程度を使って「なでしこ」を使ったプログラミング教育の説明をしました。発表後は5分程度の質疑応答がありました。内容は、発表スライドを参照してください。

全体的には興味を持って聞いていただけたような気がします。自分で実践してきたことをまとめてみると、足りない部分や改善したい部分も見えてきたので、よい機会でした。来年の講義に向けてよい準備を進めていきたいと思います。
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53. PM演習時のチームワークの評価

SEAフォーラム in 北海道 (2022/11/25開催)にも少し書きましたが、チームワークの評価に関する話題です。

3年生の課題研究で「初学者のソフトウェア開発PBL実践における課題と解決策に関する研究」というテーマに取り組んだ学生がいました.今年度のプロジェクトマネジメント演習(PM演習)では、小笠原研究室から3チームを作りました。その中の一つのチームは、プロジェクト運営に苦労していました(外側から見るとそうでもないような気がしていたのですが…)。この学生に、上記のSEAフォーラムで聞いた話を説明し、小笠原研究室の3チームに「チームワークの評価」をアンケートで実施してもらい、集計をしてみました。チームワークは、“タスクの達成度”と“チームワークの評価”の2つで評価します(参考:『チームワークの振り返り』(Michael A. West , 2014))。それぞれの質問項目を次に示します。また、これらの質問項目について7段階で評価してもらいます(1:まったく当てはまらない、7:とても当てはまる)。

タスクの達成度 (タスクの実施方法や実現度合いを評価)
  1. チームでしばしばチームの目標について見直しを行う
  2. チームが効果的に機能しているかどうかについて定期的に話し合う
  3. 仕事を行うためにチームが用いる方法についてしばしば話し合う
  4. チームの状況を考慮して、目標を修正する
  5. チームの戦略はしばしば変更される
  6. 情報の共有がうまくできているかどうかについてしばしば話し合う
  7. チームで仕事を行うためのアプローチについてしばしば見直す
  8. チームの決定方法についてしばしば見直す
社会的満足度 (チームを社会と捉えて社会的な観点から評価)
  1. チームのメンバーは困難な状況に面しているときにはお互いを支え合う
  2. 取り組んでいる仕事がストレスフルな時にも、チームは非常にサポーティブだ
  3. チーム内のコンフリクトは長引かない
  4. チームのメンバーは、しばしばお互いに新しいスキルを教え合う
  5. 取り組んでいる仕事がストレスフルな時にも、チームとして協働して取り組む
  6. チームのメンバーはいつも友好的だ
  7. チームでは、コンフリクトは建設的に対処される
  8. チームのメンバーは迅速に論争を解決する
3チームの評価結果は次のとおりでした。      
チームAB C
タスク達成度 36.75 17.5 31.33
社会的満足度 52.25 15.5 50.67

上記のテーマで実施した学生はBチームに所属していました。タスク達成度と社会的満足度は他のチームより明らかに低いという結果になりました。来年度のPM演習では、プロジェクト開始時にこの2つの評価の視点を示し、各チームでどのようにプロジェクトを運営するのかを考えてもらうのがよいかな、と思ってます。そして、プロジェクト終了時には、今年と同じようにアンケートを実施して、どのような結果になるのか確認したいと思います。

今回のこのアンケートは、SEAフォーラム in 北海道 (2022/11/25開催)に参加したからこそ得られた情報です。参加してなければ、このような情報に興味を示すことはなかったと思います。私からすると思いがけなく得られたとても美味しい情報でした。外に出ると、何かしら得ることが出来るということをあらためて実感しました。オンラインでの参加でももちろん得られるのですが、オンラインの参加になると、他の仕事をしてしまったりして集中できないことも多く、あまりこのような情報を得ることができないような気がしてます。今年は対面を大事にしつつ、ムリ・ムダをなくすためにオンラインも活用しながらいろいろと活動したいと思います。

上記のアンケートの内容と具体的な活用例は次の文献を参照してください。
坂本 牧葉, 須藤 秀紹, 野村 松信, チームワーク形成のための協調課題の導入が分野横断型PBLに及ぼす影響, 工学教育70巻, 2022年70巻4号, pp.107-117.
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52. 2年生への研究室紹介

2年生後期に実施するプロジェクトマネジメント実験(PM実験)の最終日は、来年の4月から配属になる研究室紹介の日です。プロジェクトマネジメント学科(PM学科)のプロジェクトマネジメントコースはビジネス創成グループとソフトウェア開発管理グループに分かれ、それぞれのグループに3つの研究室があります。私は、ソフトウェア開発管理グループに入っています。
※ PM学科では、2年次から経営システムコースとプロジェクトマネジメントコースに分かれます。

研究室紹介は紹介と見学の2部構成となっています。第1部では、講義室で研究室毎に15分程度のプレゼンを行います。その後、第2部では、興味のある研究室に行き見学をします。

毎年、第1部の研究室紹介で何を説明しようかと悩むのですが、今年は、自分の興味のあることを中心に説明し(と言っても、具体的な話をしたわけではないのですがが…)、詳細はこれまでの卒業研究のテーマを参照してください、という形態にしました(今までは、自己紹介、ゼミ、合宿、過去の研究テーマなども含めて説明していたので盛り込み過ぎという感じでした)。何となく講義のような感じになってしまうのですが、それほど悪くないかなという感触を得ました。来年以降も、自分の興味のある事を中心に説明し、そこに惹かれた学生を大切にするというスタイルで進めてみたいと思います。

以下のスライドは、研究室紹介の時に使った資料です。
研究室紹介資料
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51. 日本語プログラミング言語「なでしこ」

現在、1年生後期の「コンピュータサイエンス入門」を担当しています。プロジェクトマネジメント学科が所属する社会システム科学部は、システム科学、経営工学、社会科学、情報工学等の分野横断的な学問領域なので、文系・理系の学生が混在しています。それは多様な人材を育成するという面ではとても良いことなのですが、コンピュータやソフトウェアに関連した内容に対して少し苦手意識を持っている学生もいます。

教科書として活用できるコンピュータサイエンス関連の図書は多いのですが、少しハードルが高いというのが実状です。しかし、プログラミングを含めたソフトウェアについては理解を深めてもらいたいと考えていて、これまで、毎年、試行錯誤しながら進めてきました(今年で4回目の講義です)。

昨年からプログラミングを学ぶための言語として「日本語プログラミング言語 なでしこ」を使い始めました。“読める”ということは大きいと感じていて、プログラミングに関する理解を深め、実践するにはとても良い言語だと思っています。前半を「プログラミング実践」、後半を「システム開発」としています。

今までの講義で出した課題はここから参照してください。

例えば、第5回課題の解答例は以下のとおりです。時間のある方は、以下のプログラムをコピーし、なでしこ3 Web簡易エディタにペーストして実行し、なでしこでのプログラミングを体験してみてください(^^)

────────────────────────────────────────
#距離と時間を入力する
距離=「目的地までの距離(km)は?」と尋ねる
年齢=「年齢は?」と尋ねる

#距離に応じたベースの金額を設定する
もし、距離<10 ならば
 料金=200
違えば
 料金=250
ここまで。

#年齢に応じて金額を設定する
もし、年齢<=3 ならば、
 料金=0
違えば、もし、年齢>3 かつ年齢≦14 ならば、
 料金=料金/2
違えば、もし、年齢≧60 ならば、
 料金=料金×0.8
ここまで。

#結果を表示
「距離は{距離}kmで、利用者は{年齢}歳なので、料金は{料金}円です。」と表示。
────────────────────────────────────────

後半は、前半に学んだプログラミング技術を使いながら、簡単なGUIで動くシステムを開発したいと思っています(GUIの部分もなでしこを利用する予定)。その開発をとおして、レビューやテストについても実践してもらおうと考えています。おそらく、うまくいかないところもあると思いますが、まずは自分が楽しみながら準備を進めていくつもりです(新しい言語を学ぶのは楽しいですね)。

追記(1):開発したGUIの要求仕様とプログラムです。要求仕様とソースコードは次のリンクから参照できます。ソースコードをダウンロードして試してみてください! なでしこで開発したプログラムの拡張子は nako3 とするのですが、テキストファイルの扱いやすいと思い拡張子を txt としています。
健康診断申込システム 要求仕様
health_check.txt

追記(2):カメを動かすプログラムです。
     カメが動く姿がかわいいです。
───────────
カメ作成
100にカメ速度設定
N=5
30回繰り返す
  Nだけカメ進む
  90だけカメ右回転
  N=N+10
ここまで
───────────
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50. PM学会と国際P2M学会の秋季研究発表大会開催!

9月と10月に運営の立場で関与した次の2つのイベントを開催しました。開催に向けていろいろと準備は大変なのですが、当日、多くの方々が集まってくれて、さまざまな議論をしてくれている姿を見ると、“やって良かったな”と思います。毎回、この繰り返しです。人が集まって議論をすることのエネルギーを体験してしまうと、抜け出せないということなのでしょうか。

PM学会と国際P2M学会の秋季研究発表大会の活動状況については、次の活動を参照してください。 来年のイベント開催に向けて、いくつか動き始めました。来年の予定は、リンクに載せておきますので、興味のある方はぜひ参加の検討をお願いします。今年度中に予算申請が必要になる方もいると思いますので、予定を早めに決めて、予算を確保しておくのがよいと思います! いろいろな場で、みなさんと会えるのを楽しみにしています。
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49. 忙しすぎた夏休み

今年の夏休みは、結構忙しく、なんだかたくさん仕事をした感じでした。受託研究など、夏休み期間でないと対応できない事も多く仕方がないのですが、それでもやっぱりちょっと忙しかったかな、というのが実感です。振り返ってみると、放送大学の収録が大きかったような気がします。収録に向けた準備、収録(4講義分)、収録後の確認などに思ったより時間がかかりました。いろいろな方々にご迷惑をおかけしましたが、しっかりとレビューをしてもらったので、内容はよいものに仕上がったと思います。

放送大学の収録に関する内容は、次の活動を参照してください。
夏休み中に「QC検定1級」の勉強をしよう、後期の講義の準備を進めよう、などいくつかを実践しようと考えていたのですが、なかなか手が回りませんでした(言い訳なのですが…)。次に備えて準備をすることも大切なことだと思いますので、今度の冬休み以降は少し工夫してみようと思いました。計画的に物事を進められる人を尊敬します。心から。(しみじみ)
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48. 3年生、PM学会秋季研究発表大会へ投稿する

プロジェクトマネジメント演習を終わった3年生から、2022年度PM学会秋季研究発表大会(開催場所は札幌)に投稿したい、という声が挙がったので、夏休みの中でしたが、何度か打ち合わせを行い論文を作成しました。

詳細は、2022年9月8日(木)-9日(金)の活動を参照してください。

学生にとっては初めての論文作成だったので、いろいろと苦労したようです。PM演習で実践した内容なので、やったことは話せるのですが、課題は何で、その課題を解決するためのアイデアは何なのか。そして、その課題を解決するためのアイデアを実践するとどの程度の効果が見込めるのか、という論文全体の流れを組み上げるところに時間がかかりました。

2つの発表ともに、落ち着いていて良かったです。実践してきた内容が分かっているだけに、もっと話せるだろうとか、あの内容を話した方がよかったのに、と思ってしまうこともありましたが、それは欲張りすぎでした。次は、3年生後期に実施する課題研究や4年生の卒業研究の内容をぜひ発表してもらいたいと思いました。
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47. 3年生のプロジェクトマネジメント演習終了

今年も3年生のプロジェクトマネジメント演習が終わりました。4/15から7/15まで、13週に渡ったプロジェクトでした。今年配属になった11名を3グループに分けました。それぞれのグループが開発したシステムは次のとおりです。 毎年みんな頑張ってくれるのですが、今年もよく頑張ってくれました。特に、PHPとMySQLを使ったシステム開発では、各個人のプログラミングレベルよりちょっと上を目指してくれたと思います。また、今年は、DBの設計とそのDBに蓄積するデータの準備をしっかりとしてくれたのが特徴的でした。最終発表会については、2022年7月15日の活動を参照してください。

上記Aグループの最終発表のスライドです。小笠原研の中では一番評価が高かったグループでしたが、全体の中では惜しくも最優秀発表賞を逃しました。

みなさん、お疲れさまでした。この経験をぜひ次に活かしてください。発表会後の懇親会、楽しかったですね!
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46. 卒研生(3期生)からの贈り物

今年の3月に卒業した卒研生から贈り物が届きました。写真のアルバム(写真付き)と焼酎が届きました! 嬉しいです(^^)

今年の卒研生は、新型コロナの影響でオンラインで授業を受けることも多く、大変だったと思います。最後の1年間は大学に来ることができましたが、研究室でワイワイと飲食を楽しむことはできませんでした。でも、小笠原研として初めて合宿(2021年10月)ができたのは、思い出になりました。これからの活躍に期待しています。

プレゼント1 プレゼント1 プレゼント1 プレゼント1
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45. 6th長崎QDGに参加してきました

毎年恒例の長崎QDG(Software Quality and Development Gathering)に参加してきました。このイベントは、長崎IT技術者会(NaITE)の主催で毎年開催されています。

今年は、4/15(金)10:30-18:40に、DEJIMAメッセ長崎(長崎市内)で開催されました。オープニングセッションから始まりクロージングセッションまで、全部で13の発表がありました。すべてのセッションとも、とても内容が濃く、質疑応答も活発に行われ、とても楽しい1日でした。

スペシャルセッション1「シフトレフトとアジャイルテスト」は、高橋寿一氏(デジタルハーツ株式会社 CTSO(Chief Testing Solution Officer:最高テストソリューション責任者))でした。寿一さんとは、2000年頃から緩い関係でつながっていて、久しぶりに会えたので嬉しかったです。発表も最近の開発内容や最新技術に関係した内容であり、とても参考になりました。

最新の図書「ソフトウェア品質を高める開発者テスト(改訂版) ~アジャイル時代の実践的・効率的でスムーズなテストのやり方~」が6月に発刊されるとのことでしたので、すぐに、購入予約をしました!

当日は、総合司会ということで、朝から晩まで司会をさせていただきました。司会をするとよいですね。発表もちゃんと聞くようになるのと、質問がなければ、自分の聞きたい事が聞けるので、役得だと思います。久しぶりに対面で実施できて、とても楽しかったです! “来年も参加しよう”と決意をして、長崎空港をあとにしました。

開催レポートはこちらから参照してください。Facebookへの投稿はこちらから。

6th長崎QDG
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44. 春季研究発表大会(PM学会、国際P2M学会)を開催しました

国際P2M学会主催の「22年度春季研究発表大会」を開催しました。私は大会企画副委員長として運営に携わるとともに、開催校である千葉工業大学の実行委員長も務めさせていただきました。

開催準備とプログラムのコーディネイトの役割を持ってはいけない、ということを認識しました。分かっていたつもりでしたが、何とかなるだろうと思っていて、同時に2つの役割を担いました。しかし、やはり、一人二役はちょっと無理がありました。また、今回は、ハイブリット開催ということもあり、当日の会場の準備とオンラインの準備の2つが重なったので、かなり大変な状況でした。音声や映像でちょっとうまくいかないところもあり、反省すべきことが多くありました。少しへこみました。

内容は、私が言うのも何ですが、結構良かったと思います。発表のほかに、招待講演も入れることができました。これは、亀山副会長のご尽力によるものでした。あと、パネルディスカッション(1時間半)は、「これからのプログラムマネジメント教育」というテーマで企画しました。モデレータは私が努め、パネリストは次の方々にお願いしました:
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パネリスト(順不同)
鈴木克明氏(熊本大学 教授システム学センター/
      大学院教授システム学専攻教授)
藤井健視氏(国立研究開発法人 科学技術振興機構
      科学技術イノベーション人材育成部 部長)
古畑慶次氏(株式会社デンソー 技術企画部、博士(数理情報学))
玉木欽也氏(青山学院大学 経営学部 経営学科 教授)
─────────────────────────────

最初にパネリストの3名(藤井さん、古畑さん、玉木先生)から実践事例を紹介していただいたあと、以下の4つのテーマで議論しました。鈴木先生には、個々のテーマについて総括的なコメントをいただきました。最初、うまく回していけるのか心配してましたが、みなさん、百戦錬磨の方々ですので、私からの無茶ぶりにもさくっと対応していただき、面白い議論ができました。ありがとうございました!

・ゴールは?
・サポートをどのようにすればよいか?
・環境をどのように整えるのか?
・今後の計画や展望

鈴木先生には基調講演もお願いしました。Webサイトにはタイトルと概要を載せていませんでしたので、ここで紹介しておきます(Proceedingsには載ってるのですが…)。
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タイトル「教育の設計ができるとはどういうことか:
     ピンチをチャンスにこれからを創造するためのヒント」
概要:
コロナ禍によってあらゆる分野の教育実践が中断・変形を余儀なくされた。他
方で、危機対応の中で「火事場のバカじから」とも言えるような様々な知恵が
生まれた。「昨年通り」をずっと続けてきた感が強い教育実践をワンランクアッ
プさせて、変化の激しい次世代に備えることを目指すのであれば、これはピン
チではなく千載一遇のチャンスである。本講演では、あらゆる分野の教育実践
を効果的で効率的で魅力的なものにするための理論やモデルを過去70年以上に
及んで研究してきた教育工学、なかでも教育設計学(Instructional Design)
の視座から、教育の設計ができるとはどういうことを意味するかについて考え
てみたい。工学であるから、教育の効果・効率・魅力を高めるという目的を達
成するために、与件が許す範囲で、活用可能な手段を組み合わせて、漸進的・
全体的にアプローチしてきた。設計であるから、受益者に「こういう教育が欲
しかったんです」と言わせることができるような新しい何かを創造することを
目指してきた。本学会が直面する問題の解決に役立ててもらえることを願って、
教育を工学的に捉え、設計するために構築してきたノウハウを紹介したい。
────────────────────────────────────

次の図は、「P2M Version 2.0 コンセプト基本指針」です。

P2M Version 2.0 コンセプト基本指針

付け足しみたいになってしまいましたが、PM学会の春季研究発表大会に参加しました。行事委員として参加したのですが、基調講演や発表ももちろん聴きました。司会も1セッション担当しました。オンライン開催でしたが、楽しかったです。
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43. 小笠原研3回目の卒業生

2月9日(水)に、小笠原研究室3期生の卒業研究発表会がありました。プロジェクトマネジメント学科では、3年生になる時に研究室の配属先を決めます。毎年、3年生のオリエンテーションの時に配属希望を取ります。1年目(昨年)は、学生は私の事をまったく知らないため、第1希望とした学生はいませんでした。小笠原研究室2期生の時は、嬉しいことに、定員より4名も多い15名が第1希望としてくれました。そして、今回卒業の小笠原研究室3期生の時は、2倍以上の応募がありました(ちょうど新型コロナの影響でオンライン授業が多くなり、各研究室の状況や先生方のこともよく分からないということも影響したと思います)。卒業研究自体は、うまく進められた学生もいるし、苦戦した学生もいて、いろいろでしたが、最後までよく頑張ってくれたと思います。

小笠原研3期生の最初の1年間は新型コロナの影響で、直接顔を合わせることも少ない、ちょっと寂しい1年間でした。最後の1年間は、ほぼ対面で実施できたのは良かったです。また、小笠原研究室として初めてのゼミ合宿に行けたのもよい思い出です!

研究室に配属になってから卒業までの2年間はあっという間でした。3~4年生の活動については、一昨年の卒業生に対するブログを参照してください。小笠原研究室3期生13名の研究テーマは、次のとおりです(研究テーマの概要はここから参照してください)。
  • ブレーンライティング手法の効果に関する研究
  • バッファデザインを用いたプロジェクトマネジメント演習への適用
  • NBA を対象にしたデータ分析の結果から得たロード・マネジメント理論のパターンの確立化
  • IoT構築におけるifLinkの有効性に関する研究
  • 災害復興事前準備手順をPM 手法で構築するフレームワーク の考察
  • レビュー工程に影響を与える要因を認知バイアスの観点から解決する手法の提案
  • テスト自動化ツール活用のためのテスト環境の構築
  • 教育系以外の学部出身教員が活用できる学習指導案のフレームワークの開発 -PM手法を用いた学習指導案の作成-
  • ICT教材を用いた中等教育の課題解決策の提案
  • ifLinkオープンコミュニティで思考法を活用したIoTプロジェクト運営に関する研究
  • テキストマイニングを用いたSPI Japan発表事例の傾向に関する分析
  • 大手携帯会社3社を対象に比較したゲーム理論を用いた携帯料金の値段設定に関する研究
  • SwitchBotを用いたIoTシステム構築のための調査と評価
この2年間、うまく進められないことも多くありましたが、無事卒業できて良かったです。新型コロナウィルスの感染拡大の影響で研究室での懇親会を開催できなかったのは残念でした。

卒業研究で大きく伸びた学生、最後に仕上げた学生、なかなかうまくいかずに苦しんだ学生と、いろいろなパターンがありましたが、みんな明るく、素直な4年生でした。これから、とにかく頑張って欲しいと思います。これからの人生が素晴らしいものでありますように!
Heaven helps those who help themselves!
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42. 2022年2月:品質分析・メトリクス(応用編)の開発

企業からの依頼で、1日コースのセミナーを企画しました。今回は、新規のセミナーです。今まで、品質分析・メトリクス(初級編)を開催していましたが、今回は、品質分析・メトリクス(応用編)です。応用編ということで、内容をどうすればよいかいろいろと悩みながら、最終的には、以下の構成としました。
──────────────────────
1. はじめに
2. 定量的な品質管理活動の必要性
3. データ分析の技法
4. 品質予測のアプローチ
5. おわりに
──────────────────────
データ分析の技法のところでは、Googleスプレッドシートを使ってQC七つ道具の基本と活用方法を理解するという内容にしました。データ分析の技法で実施する演習は次のとおりです。
──────────────────────
・基本統計量を計算する
・ヒストグラムを作成する
・パレート図を作成する
・箱ひげ図を作成する
・複雑度を計算する
・QC七つ道具の理解度確認
──────────────────────

QC七つ道具、古いよね”という方もいますが、私はそうは思いません。データサイエンスという用語が広がり、大学でも、積極的にデータサイエンスの教育を実施しなさい、という流れになっています。高度な統計手法やAIなどを活用したデータ分析が重要であり、さまざまな取り組みを進める必要は当然あると思いますが、基本に立ち返って、基礎をしっかりと身につけるということも大切なことだと思います。

「QC七つ道具を活用する際の心構え」を以下に示します。まずはここから出発すべきだと思っています。
──────────────────────────────
・QC7つ道具は目的達成のための[有効な手段
・[問題の95%]はQC7つ道具の活用で解決可能
・理論を知るよりも、[実践的な使い方]を体験することが大切
・QC7つ道具の価値は使う人、使う目的によって決まる
・最終結果だけで判断せず、[データ収集]の過程を
 [重視]して[事実]を把握することが大切
・[層別]しなければ、うまい解析も管理もできない
・真に大きな問題はたいてい[2、3]のもので占められている
──────────────────────────────

このセミナーは4月に開催するので、それまでに内容と演習問題を仕上げて、準備万端にして当日を迎えたいと思っています。頑張ってみます!
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41. 2022年1月:4年目が終わり、5年目を迎えるにあたり

新年が始まりました。今度の3月で大学に移ってきて4年目が終わります。4月から5年目を迎えます。前月のブログでも書きましたが、後期の授業はあっという間に終わってしまいました。この4年間も振り返ってみると、あっという間に過ぎてしまったという感じです。

4年間の中で一番時間をかけたのはやっぱり「授業」ですね。専門科目として4科目あり、教材開発と進め方の両方で試行錯誤しながらやってきました。だいぶ落ち着いてきたような気もしますが、終わりがない、というのもまた実感です。毎年、いろいろと悩みながら、工夫しながら進めていくしかないと思ってます。今後は、学外の方々と連携して、私の講義の中で数回のスペシャルセッション(例えば、「アジャイル開発におけるテスト」とか)を作るようなこともしてみたいと思います。

大学外の活動で言えば、ソフトウェア技術者協会プロジェクトマネジメント学会国際P2M学会での活動が中心でした。日本SPIコンソーシアム(JASPIC)、派生開発推進協議会(AFFORDD)、の活動は少しだけでした。あと、国際会議(IIAI EAIS)、ソフトウェア工学の基礎ワークショップ(FOSE)、長崎QDG、日科技連(SQiP)の活動にも少し関与しました。これらの活動は継続することが大事だと思っていますので、今後も同じように対応したいと思います。

企業との連携では数社から引き合いがあり、主に「受託研究」という形式で進めさせてもらっています。教材開発と実施、コンサルティングが中心ですが、ここは引き続き継続していきたいと思っています。研究資金を確保できるというのは大きくて、お金の心配をしないで活動できているのはありがたいことです。開発現場の方々とコミュニケーションを取ることは、現状を把握/理解するうえでもとても大切だとあらためて思いました。

よりうまく回していきたいと思っているのは、研究活動です。まずは、学部、修士、博士の学生の研究で継続性を持てるようにするのがよいかなと思ってます。そのためには、今は自由にテーマを選ばせていますが、ある程度テーマを絞り込んだり、選別したりする必要があるのだろうと考えています。そうなると、まずは、自分がしっかりと「研究」について考えて取り組まないと何も始まらない、というところに行き着きます。分かっていることですが、ちゃんと「研究」に向き合わないといかんと思ってます。
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40. あっという間に後期の授業が終わりました

後期の授業もあっという間に終わってしましました。後期の授業は、「オペレーションズリサーチ入門(2年生)」、「コンピュータサイエンス入門(1年生)」、「品質マネジメント(2年生)」の3つです。自分も勉強しないと自信を持って教えることもできないので、勉強をして、準備をして、講義に臨むという繰り返しです。大変という感覚はあまりなく、どちらかと言うと、楽しみながらできているという感じですね。

それぞれの授業では、ツールや開発環境(プログラミングのため)を使っています。最初にざっと説明をして、ツールや開発環境を使って手を動かしてもらい理解を深めてもらい、再度解説をするというパターンです。課題では、授業で解いた内容とは別の問題を出し、解いてもらうようにしています。

授業で使うツールや開発環境は次のとおりです。道具を知る、使ってみる、ということも大事なポイントだと思っているので、今後もこのようなスタイルで続けていこうと思っています。あとは、授業アンケートの結果が高くなるようにもっと工夫して、いつか、「グッド・レクチャー賞」や「ベスト・ティーチャー賞」を取ってみたなぁ、とも思います。
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39. QBookに記事が載りました!

バルデス株式会社が主催しているQBook(ソフトウェア品質向上プラットフォーム)というサイトで次の記事を公開していただきました。
【QA最前線! #1】「プロセスを改善すると高品質なソフトウェア開発を実現する組織文化が創造できる

9月頃にインタビューと写真撮影をしていただき、編集してもらいました。プロセス改善活動の内容を中心に話をしました。

写真を載せてもらえることはありがたいですが、恥ずかしいですね。写真で見るとメガネの色が少し出るのだなとか、顔の角度や手の位置をもう少し考えた方がよかったなとか、違う洋服の方がよかったかな、とかとか、アップされてから気がつくことがたくさんあります。他の人から言わせれば、どうでもいいことだし、ほとんど気にしないことだと思いますが、本人からすると何となく気になってしまうこともあります。まあ、しかし、どうでもよいことですね。声を掛けていただき、ありがとうございました。
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38. 国際P2M学会 秋季研究発表大会開催! 久しぶりの出張(3日間)

国際P2M学会主催の「21年度秋季研究発表大会」を開催しました。私は大会企画副委員長として運営に携わりました。今回の開催校は北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)で、実行委員長は内平先生、実行副委員長は第一工科大学東京上野キャンパスの三宅先生でした。私が東芝にいたころ、内平先生は2年間ほど私の上司でした。私が初めて(18th ICSE 1996: Berlin, Germany)に参加した時の上司で、自由にいろいろとやらせてもらったことを今でも感謝しています。ちなみに、その時の論文のタイトルは"Experiences of Software Quality Management Using Metrics through the Life-Cycle" でした。

今回の大会のテーマは「オープンでアジャイルなイノベーションマネジメントとP2M」でした。基調講演、パネル討論はとても興味深く、面白い内容でした。記憶に残ったキーワードを残しておきます。
  • 計画的であること、非計画的であることのバランスをとる(両立する)ことが大事。無計画だとひらき直りすぎる、計画をベースにすると堅すぎる、ハンドリングしづらい。
  • 中期計画(3ヶ年計画)を毎月書き換えるようなイメージを持つのがよいのではないか
今回は、運営チームはJAIST 金沢駅前オフィスに集まりました。久しぶりに内平先生とも会って話すことができました。楽しかったです。以下は、運営部屋と懇親会後、金沢駅前の写真です。
金沢1 金沢1 金沢2

金沢での秋季研究発表大会の10/21(金)~22(土)は、「ソフトウェア技術者協会 教育分科会活動 計画検討会」と「まなばナイト」へ参加してきました。詳細は、活動の記事を参照してください。
行動を共にした米島さんの Facebook のリンクですが、鳴門海峡秋景色です。初めて見ましたが“すごい”と感動しました。上記の記事にも書きましたが、あわじから大阪までの道中もとても楽しかったです。やっぱり、人と接していろいろと会話をするのは良いですね。
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37. 9月の過ごし方

大学教員は夏休み、春休みが長いです。これは、やっぱり嬉しいですね。毎年、この時期にいろいろなことをやっておこうと思うのですが、学外での仕事をこの時期に入れることも多く、思ったよりは時間が取れません。ということで、休み期間中の目標を設定してもあまり関係ないというのが結論です。毎年繰り返されることなので何をいまさら、という感じです。ほんと、成長しないですね。継続してコツコツやること、まあ、それしかないです。

9月の前半の活動は次のとおりでした。 このような活動をとおして、自分が準備したコンテンツを見直しができ、最近の動向や新しい気づきを得ることができるということがとても良いと感じています。大変なのですが、声を掛けていただける間は頑張ってみようかなと思います! 9/20(月)から授業開始です。頑張ろうっと。
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36. 前期の講義を終えて

9月は、前期の講義を終え、成績も付けて一息付く時期です。でも、9月中旬以降から後期が始まるのでのんびりもできないのですが… また、9月は受託研究での企業向けセミナーや、学外のセミナーなどもあり、バタバタとしてます。でも、何もないよりかは良いのかな、と思ってます。

前期の講義のうち「ソフトウェア開発管理」は、大きく内容を変えてしました。私の所属する「プロジェクトマネジメント学科」では、2年生の後期にプロジェクトマネジメント実験(PM実験)があり、3年生の前期にプロジェクトマネジメント演習(PM演習)があります。これらの演習は3~4名でチームを組み、それぞれ、6週間、13週間をかけWebサイトやWebシステムを開発するというものです。てこの演習の概要は以下のサイトから参照してください。
プロジェクトマネジメント実験・演習

PM演習では、PHPとDB(MySQL)を使ってWebシステムを開発するのですが、プログラミングが思ったように進められないことが多く、何とかしたいと考えていました。「ソフトウェア開発管理」の受講生は多いため、この講義の中でプログラミングも教えてしまおう、ということを考えました。

13週の講義のうちの前半を主にプログラミングにしてみました。内容としては以下の構成にしました(クリックすると大きくなります)。

プログラミング

手応えがあったと思う一方、思ったほど伝わっていないということもよく分かりました。当たり前ですが「個人差は大きいなぁ」というのが実感です。来年はこのスタイルをやめよう、という気持ちにはなっていないので、今年度の講義をベースに、もう一工夫してみようと思います。今回はすべての資料を電子ファイルにして配布しましたが、ひとつのアイデアとしては、電子ファイルのほかに紙の説明文や問題文を配付してみようかなと思ってます。紙の媒体を使うことで、少しでも理解度が上がるのではないかな、という思いますがあります。そんなことはないのかな? 来年の春休みに考えてみます。
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35. SEAフォーラム「ガンダム GLOBAL CHALLENGE から学ぶ」

SEA Forum in July 2021 [online] ガンダム GLOBAL CHALLENGE から学ぶを開催しました。

思い起こせば、半年くらい前のSEA幹事会で、MONOistの記事“「実物大の動くガンダム」を実現した道筋とは、プロジェクト関係者が経緯を語る”を読んだ北海道支部の本多さんが、ガンダム GLOBAL CHALLENGE(GCC) テクニカルディレクターの石井さんの話が聞きたい、という提案をしてくださいました。最初は、実現するのは難しいかなと思ったのですが、ダメ元で打診したところ、検討したいという返事があり、そこから4~5回の打合せをして実現まで辿り着きました。企画、設計、調整(メールでのやり取り)、打合せ(オンライン)、当日の司会までを取り仕切ってくれた本多さんに感謝です。

以下は当日の構成です。15時から開始し、16時半で予定どおり終わりました。
───────────────────────────
        本日の構成
・ガンダムGLOBAL CHALLENGEの紹介動画
・プロジェクトの概要、成功までの話(石井さんから)
・プロジェクトの技術マネージメントについてを対話形式
 でお話しを伺う
・全体を通してのQ&A
・終了時間 16:30
───────────────────────────

対話形式で問いかけた内容は、「石井さんがGGCの技術マネージメントとして実践した4つのこと」、「手離れのよさ=インタフェースの切り方について」、「成功の共有について」など14項目でした。どの質問に対しても、実践してきた内容をベースにした回答をいただきました。プロジェクトの裏側を知るという期待と面白さ、“やっぱりそうだよな”と思える納得感が満載のやり取りでした。あっという間の1時間半でした。面白かったです!

私は、プロジェクトマネジメント学科の教員をしていますが、プロジェクトマネジメントの奥深さ、面白さ、厳しさ、楽しさ、ポイントなどを学生に伝えるのは難しいと感じています。このような実際の事例をベースにした内容だと、学生にも伝わりやすいと思いました。世の中にはたくさんのプロジェクトマネジメントの事例があるので、今後、それらを参考・活用して、学生へ伝えるメッセージを考えてみたいと思います。

今回は、動くガンダムが設置されている横浜・山下ふ頭に近い会場を借りて、そこから発信をしました。フォーラム終了後、ひろのぶさん、栗田さん、私の3人で、GUNDAM FACTORY YOKOHAMAに行きました。ガンダムが動くのを待っている時、何と嬉しいことに、石井さんと再び会うことができました。実物大のガンダムを前にして、そのガンダム開発のテクニカルディレクターである石井さんと話ができるという至福の時を味わいました! 本当に、楽しい1日でした。本多さん、お疲れさまでした。また、石井さんとこのファーラム開催のためにいろいろとご協力をいただいた皆様に感謝しています。ありがとうございました。

ガンダム1 ガンダム2 ガンダム3
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34. ソフトウェア・シンポジウム2021を開催しました

ソフトウェア・シンポジウム2021(SS2021)を開催しました。今回も昨年と同様オンラインでの開催でした。開会の挨拶と2つの基調講演は現地から発信することになったので、期間中、ホルトホール大分の会議室を借りました。私も、4月のプログラム委員会に引き続き、大分に行き参加しました。

基調講演と発表セッションの時に、大きな問題が発生したのですが、何とか乗り切ることができました。基調講演の時は、マイクスピーカーとカメラとPCの構成をどうするかというところで少し混乱してしまい、ドタバタしてしまいました。いろいろなシーンを想定して事前準備をしておかないといかんですね。発表セッションの時は、3つのセッションをパラレルで実行させなければいけなかったのですが、2つしか開けないという状況に陥ってしまいました。Zoom は10個分のライセンスを契約していいたのですが(ワーキンググループを開催するために必要となるため)、メールアドレス(アカウント)は1つしか設定していませんでした。1つのアカウントでも2つの会議は設定できるのです。なので、3つ以上もできるのだろうと思い込んでいました。しかし、実際には2つまでしか設定できないという仕様でした(おそらく)。直前に動作確認もしたのですが、2つまでを確認して、ちゃんと3つ同時に動くことを確認していませんでした。大失敗です。「1つ、2つ、たくさん」ではダメで、「1つ、2つ、3つ、たくさん」にしないとダメですね。“詰めが甘い”と言われればそれまです(^^;)

今回は、大分大学の吉田先生(実行委員長)、紙名先生(実行委員、プログラム委員)、ハイパーネットワーク社会研究所の青木所長(実行委員)、渡辺副所長(プログラム委員)、株式会社ザイナスの山本さん、宮本さん(ともに実行委員)といった地元の方々にたくさんサポートしていただきました。大分の方々とネットワークが作れたことに感謝しています。また、このような広がりを実現できたのも、大分開催を最初に提案していただいた熊本高等専門学校校長の荒木先生(実行委員)がいたからこそです。感謝しております。最初、荒木先生から大分大学の西野先生に声をかけていただいのたですが、残念な事に西野先生とお会いすることができませんでした。ご冥福をお祈りします。

個人的には、今回のシンポジウムでは、基調講演の3件の講演がとても印象に残っています。石松さんと高濱さんの講演は、ホルトホール大分から発信したということもあり、目の前で講演を聴けました。石松さんの講演では、「地元の企業と連携しながら地域を活性化させる」という思いがしっかりと伝わってきました。高濱さんの講演からは、「ビジョンを掲げて実行すること」の大切さを再認識しました。劉先生の講演は、現実的な内容の組み合わせではあるのですが、とても刺激的でとても興味を持ちました。研究者としてのあるべき姿を示していただいたと思っています。

発表、ワーキンググループともにとても良い内容だったと思います。また、質疑応答も活発で楽しかったです。来年のSS2022は盛岡で開催です! 今度は対面で開催したいです…
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33. 国際P2M学会 春季研究発表大会を開催しました

国際P2M学会主催の2021年度春季研究発表大会を開催しました。今回は、大会企画側の副委員長ということで、協賛の依頼、動画投稿サイト、動画視聴サイトの整備などの役割を担いました。動画視聴サイトは Youtube で準備しました。今まで、Youtubeでの投稿をしたことがなかったのですが、投稿の仕組みや方法などを知ることができて面白かったです!

基調講演とパネルディスカッションのプログラムは次のとおりです。基調講演はどちらも興味深い内容でした。今、会社は、世界はどうなっているのかということが分かる内容でした。パネルディスカッションはとても内容の濃い、よい議論が展開されたと思います、当麻先生の議論の進め方が素晴らしかったです。勉強になりました。
■開催日:2021年4月18日(日)
■大会スケジュール:
(1)研究発表の部(オンデマンド配信)
4月18日(日)~5月17日(月):発表予稿・動画・質問&コメント・回答の閲覧期間
4月18日(日)~4月27日(火):発表者への質問&コメント受付期間
4月18日(日)~5月2日(日):発表者から質問者への回答受付期間

(2)講演の部(ライブ配信)
13:00-13:30 総会(学会員のみ)
13:30-13:40 休憩
13:40-14:00 開会挨拶 山本秀男氏(国際P2M学会会長)
       開催校挨拶当 麻哲哉氏
       (慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)
14:00-14:50 基調講演1「デジタル時代のアジャイル・ガバナンスのすすめ」
       須賀千鶴氏(世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長)
14:50-15:40 基調講演2「DXのドライバーは何なのか」
       福田譲氏(富士通株式会社執行役員常務CIO兼CDXO補佐)
15:40-16:00 休憩
16:00-17:45 パネルディスカッション
      「超VUCA時代の社会変革とプログラムマネジメント」
       モデレータ:当麻哲哉氏
       パネリスト(順不同):
        沼尻祐未氏(経済産業省商務情報政策局情報経済課
              アーキテクチャ戦略企画室室長補佐)
        深堀昂氏(アバターイン株式会社代表取締役CEO)
        佐藤達男氏(広島修道大学経済科学部教授)
        白坂成功氏(慶應義塾大学大学院
              システムデザイン・マネジメント研究科教授)
17:45–17:50 閉会挨拶亀山秀雄氏(国際P2M学会副会長)


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32. ソフトウェア・シンポジウム2021 プログラム委員会開催

ソフトウェア・シンポジウム2021(SS2021)のプログラム委員会を開催しました。今回も現地(大分)には集まれず、オンラインでの開催となりました。ただ、私は、実行委員長(大分県情報サービス産業協会会長の森秀文さん)や基調講演者(ハイパーネットワーク社会研究所主幹研究員の石松博文さん、大分県商工観光労働部長の高濱航さん)へのご挨拶とお願いを伝えるために、現地に向かいました。シンポジウムを開催するホルトホール大分の一室を借り、そこに現地のメンバも数名集まって、プログラム委員会に参加しました。

対面で会うとやっぱり嬉しくて、楽しくて、話も盛り上がりました(感染対策はしています!)。今年もおそらくオンライン開催となってしまいそうですが、基調講演はホルトホール大分から発信する予定なので、大分で参加したいという方々のために、集まれる場所を作ろうと思っています。

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SS2021の実行委員長は、大分県情報サービス産業協会 森会長にお願いしました。今回、プログラム委員会を開催にあたり、開催挨拶をお願いしました。事前に、ソフトウェア技術者協会、ソフトウェア・シンポジウムの事もしっかりと理解・把握していただいたうえでシンポウムの歴史や意義を紹介していただきました。さらに、大分のITに関する取り組みの紹介も交えながら、将来に向けての方向性を示していただきました。とても素晴らしいメッセージをいただきました。

森会長には、開催の挨拶の後、査読結果に対する議論を1時間程度聞いていただきました。お見送りをする際、森会長から「個々の論文に対して深く丁寧に議論しているのですね。研究者や技術者同士の議論はとても面白かったです。久しぶりに技術者に戻った感覚になりました」というコメントを頂きました。褒められたというか、自分達が行っている事の価値を分かってくれたと思える、とても嬉しい瞬間でした。
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31. 小笠原研2回目の卒業生

2月5日(金)に、小笠原研究室2期生の卒業研究発表会がありました。プロジェクトマネジメント学科では、3年生になる時に研究室の配属先を決めます。毎年、3年生のオリエンテーションの時に配属希望を取ります。1年目(昨年)は、学生は私の事をまったく知らないため、第1希望とした学生はいませんでした。小笠原研究室2期生の時は、嬉しいことに、定員より4名も多い15名が第1希望としてくれました。

配属を決めるために面接をさせてもらいました。全員を受け入れたのですが、そうもいかず、4名の方にはお断りをさせていただくということになってしまいました。第1希望にしてくれたのに、申し訳ないという気持ちです。

小笠原研2期生の最後の1年間は新型コロナの影響で、直接顔を合わせることも少ない、ちょっと寂しい1年間でした。もちろん、ゼミや卒業研究はオンラインで開催しましたが、直接顔や雰囲気、状態を見ながら議論できた方がもっと伝わることもあったのかなと思います。卒業研究については、何となく3つのパターンに分かれた気がします。“グイグイと伸びた学生”、“土壇場に一気に仕上げた学生”、“頑張りきれなかった学生”の3パターンです。来年度以降は、頑張りきれなかった学生”ができるだけ少なくなるように工夫したいと思います。

研究室に配属になってから卒業までの2年間はあっという間でした。3~4年生の活動については、昨年の卒業生に対するブログを参照してください。小笠原研究室2期生11名の研究テーマは、次のとおりです。
  • はてなブログを対象にした面白さの指標の提案 -面白さ分析システムの開発-
  • オンラインイベントの評価に関する研究 ~U・Iターン者向け就職活動オンラインイベントの企画~
  • ブロックチェーン技術を使用したデータ流通事業」の課題の明確化
  • コンクリート品質の安定性向上の研究 ~エアメータ試験での空気量の安定化~
  • ファンクションポイント法の計算ツールに関する研究
  • 動画配信事業における動画製作フローの提案
  • アジャイル開発におけるスクラムマスターの適正に関する研究
  • プロジェクトマネジメント演習におけるCCPMツールのガイド作成
  • ソフトウェア信頼度推定ツールの開発
  • 初学者がプログラミングを習得できる学習環境の提案
  • テストケースの優先度と実行工数を考慮したテストケース選択ツールの開発
この2年間、うまく進められないことも多くありましたが、無事卒業できて良かったです。新型コロナウィルスの感染拡大の影響で卒業式と謝恩会が開催できなかったのは、残念でした。

卒業研究で大きく伸びた学生、最後に仕上げた学生、なかなかうまくいかずに苦しんだ学生と、いろいろなパターンがありましたが、みんな明るく、素直な4年生でした。これから、とにかく頑張って欲しいと思います。これからの彼らの人生が素晴らしいものでありますように!

Heaven helps those who help themselves!
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30. SEA Forum 「メタ認知を可視化して対話を図る」

SEA Forum in Feb. 2021 [online & offline] を開催しました。今回のテーマは「メタ認知を可視化し対話を図る」でした。講演者は、横浜創英大学看護学部 准教授の岡本華枝先生です。(2021年4月からの所属は岐阜聖徳学園大学 看護学部です)

最初に、「GOLDメソッド (GOAL ORIENTED LEARNINGDESIGN METHOD):ゴール達成型学習デザイン」の説明がありました。GOLDメソッドは、“「できる」看護師の頭の中を可視化した看護実践モデル”として、医療教育、看護教育・実践に活用するために開発されました。今回のテーマの中に“メタ認知”という言葉があります。GOLDメソッドを活用することで、看護実践能力を高めるための「認知技能:評価・判断力」の向上につながるということでした。

できる看護師は、いろいろな場面で視覚、聴覚、触覚、臭覚などからの情報を入力し、処理を行い、プランの実行、説明・報告、記録などの出力につなげることができます。つまり、入力→処理→処理という認知技能が無意識に働いているということです。別の表現で言えば、看護を実践する自分を支えるもう一人の自分いる(メタ認知能力を持つ)、ということだと理解しました。

GOLDメソッドは、できる看護師のこのような認知技能を以下の6段階のステップ(ナースステーションで頭を整える(リハーサル)~振り返り)で可視化したところに特徴があります。さらに、この6段階の中でよく現れる場面を看護実践スクリプトとしてまとめてあります。例えば、第1段階であれば、“病状認識カード”や“リハーサルカード”などが用意されています。このスクリプトは全部で20種類程用意されているそうです。

GOLDメソッド

講演の中では、この6段階のステップを演習(題材は「彼女とディズニーランドでデート」)をとおして実践してみました。日常における活動や業務にこの6段階のステップが違和感なく当てはまることが実感できました。システムやソフトウェアの開発においても、この6段階を意識することはよくあります。例えば、バグが見つかった時は、バグの報告からどこに原因がありそうか当たりを付け、次に動作確認をし、原因となりそうな部分を絞り込み、再現するかどうか確認したあと、修正案を考える、といったステップを踏みます。最後に、同じようなバグを埋め込まないように対策を練ります。これ以外にも、「進捗会議に参加する」、「レビューに参加する」などいろいろな場面で、このようなステップが使えそうという感触を持ちました。今後、紹介された図書でGOLDメソッドを勉強し、システム/ソフトウェア開発における認知技能のステップと実践スクリプトの提案につなげることができるかどうか考えてみようと思いました!

GOLDメソッドの詳しい内容は、「急変させない患者観察テクニック」に載ってます。
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29. FOSE2020(11/19-20) で司会を務めました

日本ソフトウェア科学会主催のFOSE2020:第27回ソフトウェア工学の基礎ワークショップで司会をしました。以下は、私が担当したセッション「プログラミング教育」での発表概要です。
本セッションでは5件のショートペーパーが発表された.1件目は花川氏による「Project-based learningの効果的な授業設計の検証」である.高等教育におけるProject-Based learningの授業設計は教育効果の観点で重要な要素となる.そこで,3期にわたるPBL科目において基本知識・技術の3つの教授法(教師ナビゲート重視,学生イニシアチブ重視,学生オンライン学習重視)と成果物の関係を検証した.今回,PBLにおけるターゲットの成果物は映像であり,プロジェクションマッピングイベントで利用する映像の一部(およそ7分間)でる.また,1期15回のPBL科目の12回分の具体的な授業設計を行った.結果として,教員主導のPBLでは学生満足度は高いが,成果物の質が低く,獲得技術も少ない.学生主導のPBLでは学生満足度は低いが,成果物の質は高く,獲得技術も多いという結果を得た.

2件目は高橋氏による「Ruby on Railsの初学者の躓き要因分析」である.Ruby on Rails(以降,Rails)はRubyで書かれたオープンソースのWebアプリケーションフレームワークである.現在Railsは,国内外に多くの利用者を抱えるサービスや大学におけるプログラミング教育でも活用されている.初学者向けのプログラミング教育で活用する際,多くの受講生がコーディングを間違ってしまう(躓いてしまう)という問題があった.本研究では,Rails が出力するログファイルに含まれるエラーメッセージを分析し,初学者の躓き要因の分析を試みた.具体的には,Webアプリケーション開発科目の演習課題として提出された30名分のログファイルを分析した.その結果,受講生が躓いた要因は9種類の中で,最も多くの受講生が躓いた要因は,ActionView::Template::Errorというビューファイルに関連した誤りであり,ほぼ8割の受講生が躓いたことが明らかになった.

3件目は蜂巣氏らによる「プログラミング学習者の編集途中のソースコードと模範解答における変数の対応づけ方法の提案」である.学習者がプログラムを完成できずに行き詰まった場合,変数について理解することが行き詰まりの原因箇所の特定に有効である.しかし,学習者のソースコードの変数名は,模範解答と異なるだけでなく,役割を想定しにくかったり,模範解答では別の役割を持つ変数名を使うなど,指導者が変数の役割を把握するのに時間を要するという問題があった.本研究では,学習者の編集途中のソースコードと模範解答プログラムの間での変数を対応づけるために,C言語の関数を対象にして,変数の6つの特徴を抽出した.次に,各特徴の大まかな基準で対応づけを行い,対応の候補が複数ある場合はさらに詳細な基準で候補を限定して対応づける方法を提案した.その結果,模範解答プログラムから文を削除したり,意図的に誤りを混入させて人為的に作成した学習者の編集途中のプログラムに対して提案方法を適用したとことろ,およそ7割のソースコードで期待した変数の対応が行えた.

4件目は八十田氏らによる「初学者同士におけるペアプログラミング学習の支援 -Scratchにおける細粒度操作ログ取得環境の提案-」である.初学者のためのプログラミング導入教育におけるペアプログラミング時に,知識不足から互いのミスが指摘できず,つまずくことがある.そこで,教員による適切な支援が必要となるが,Scratchを代表とするビジュアルプログラミングにはエラーが表示されないため,教員が学習者のつまづきを詳細に把握することが難しいという問題があった.本研究では,学習者の操作ログを取得する環境を構築し,コード領域内のブロック数,親ブロック数,ブロック操作回数および実行回数に焦点を当て分析をした.その結果,コード領域内のブロック数に変化がなく,操作回数や親ブロック数の変化が多い時は,試行錯誤を行っているか,つまづいていると考えられるなどの知見を得た.

5件目は米田氏らによる「Scratchを用いたプログラミング授業における教員支援のためのリアルタイム分析可視化システムCRABERの提案」である.本研究では,Scratchを用いたプログラミング授業での使用を想定した教員支援システムを提案した.このシステムは,リアルタイムに生徒のScratchプロジェクトを分析し,7種類のメトリクス(総ブロック数,総スプライト数,変数名,定義ブロック数,連続するブロックの個数,循環的複雑度,コードの複製)を利用して,生徒が抱えるコードの問題点と指導内容を教員向けに提示する.テストデータを用いて本システムを活用した結果,各メトリクスの分析および可視化が可能であることがわかり,生徒間に発現の多い問題点を把握できるといった知見を得た.
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28. CITニュースに発表奨励賞受賞の記事が載りました

次の文章は NEWSCIT ニュースシーアイティー(2020.12.15)に乗った記事です。


“プロジェクトとプログラムのマネジメント”を考える国際P2M学会の第30回秋季研究発表大会がオンラインで開催され、今野裕紀さん(マネジメント工学専攻博士課程2年、小笠原秀人研究室)が「P2Mを活用したプロセス改善活動推進フレームワークの提案」を発表。11月6日付で発表奨励賞を受賞した。

良いソフトウエアを作るには、良い開発プロセスが不可欠。そこでプロセスを改善するSPI活動(Software Process Improvement)が必要になる。SPI活動は組織として改善活動に方針を持ち継続的に実践するもの。実践方法は種々研究されてきたが、▽その方法をどう実現すればいいか分からない▽実践方法を組織の環境に合わせるのが難しい――などが課題だった。

今野さんは解決にP2Mの考え方を活用し、SPI活動の実践法とP2Mの定義を対応させ、P2Mで用いられるフレームワークに展開。このフレームワークをSPI活動の実践時に活用する。

次に、提案フレームワークに対し、SPI実施時に用いられる推進因子(組織背景や組織の方針を指標化した結果)と、過去に蓄積されたSPI関連事例をマッピング。マッピングにより、SPI推進組織の環境に合わせたSPI実践法が示せ、組織の環境に合わせた実践ができるようになる。

小笠原教授にP2Mやプロセス改善活動について意見をぶつけ、必要論文を100件以上読んだという。今野さんは「国際P2M学会には初投稿だったので、どう評価されるか不安でした。受賞連絡をいただいた時は、驚きと喜びが同時に来ました。小笠原教授や学会の方々にお礼を申し上げます」と語った。
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27. PM学会 秋季研究発表大会 (11/18-19) で司会を務めました

プロジェクトマネジメント学会(PM学会)主催の2020年度 秋季研究発表大会で司会をしました。以下は、私が担当したセッションでの発表概要で、プロジェクトマネジメント学会誌に掲載される予定の文章です。


大会1 日目の本セッションでは,次の3 件の発表が行われた.

1201「顧客利益の可視化によるプロジェクト目標の設定に関する提案 ―「アジャイルプロジェクトの木」による顧客ベネフィットの構造化の研究―」文教大学 吉田知加氏の発表では,アジャイルプロジェクトを遂行する際に,イテレーション単位に考慮すべき目標を可視化する方法が提案された.従来のウォータフォール型に代表される開発プロジェクトでは,システム開発コスト,システムランニングコスト,システムメンテナンスコストは開発側で把握できるものの,ビジネスコスト削減費用や顧客利益は開発側から不透明な領域であった.近年,ユーザの多様なビジネス要求に柔軟に対応するためにアジャイル開発が広く用いられるようになっている.アジャイルの木は,イテレーション毎に開発側でのコストとそのシステムを利用することによるユーザ側の価値を結びつけるものである.アジャイル開発における可視化の提案として今後の進展に期待したい.

1202「GUIを考慮した深層学習に基づく最適メンテナンス時刻の推定と最適プロジェクト人員数の推定」東京都市大学 柳澤拓氏の発表では,オープンソースソフトウェア(以下,OSS と略す)のメンテナンス前と後の開発工数を定式化し,総開発工数に基づいた最適なメンテナンス時刻を推定し,推定された最適なメンテナンス時刻に基いたプロジェクト人員数の推測方法に関する提案と,その方法の有効性を評価した結果が報告された.開発工数の予測では,GUIを考慮した投入開発工数予測モデルのパラメータの推定では深層学習が用いられている.今後,OSSの信頼性や品質を評価する方法として確立するために,今回対象としたApache OpenOffice 以外のOSSでの適用・評価を行うとのことであった.

1203「選挙戦のプロジェクトマネジメント」オフィスYOSHIDA 吉田憲正氏の発表では,地方選挙における新人立候補者が投票日までの選挙戦というプロジェクトをどのようにマネジメントしたかを分析・モデル化し,その内容をステークホルダ・マネジメント,コミュニケーション・マネジメント,タイム・マネジメント,及びプログラムマネジメントの視点から考察した事例が紹介された.今回の分析と考察は,実際の選挙戦を事例に基づいて行われたものであり,選挙戦におけるポイントや雰囲気が伝わってきた.社会科学の視点から検討した事例として参考になる内容である.
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26. SPI Japan 2020 でミニ講演をしました

SPI Japan 2020 -ソフトウェアプロセス改善カンファレンス2020-の「ミニ講演&みんなで納得セッション」でミニ講演とパネル討論をしました。このセッションは、4名の講演者が20分程度の講演をしたあと、パネル討論をするという形式で進めました。ミニ講演は事前に動画を撮り、それを見てもらいました。その後、オンラインで全員が集まり、端山さんの司会のもと議論をしました。

共通テーマとミニ講演の内容は次のとおりです。

<共通テーマ>
IT新時代を牽引するニュータイプになろう!
~Withコロナでも大丈夫! 必要とされる改革・変革とは?~
※ニュータイプ:改革・変革に適応できるリーダやエンジニア

<ミニ講演>
① 人工知能とプロジェクトマネジメント
 内平 直志 氏 (北陸先端科学技術大学院大学 教授 東京サテライト長)
② ソフトウェア品質をめぐる諸問題とプロセス改善
 小笠原 秀人 氏 (千葉工業大学 社会システム科学部 プロジェクトマネジメント学科 教授)
③ 新時代の技術者に求められる能力と改善の進め方
 端山 毅 氏 (株式会社NTTデータ 技術革新統括本部 テクノロジーストラテジスト)
④ アジャイル開発を4つの観点から見てみよう~プロセス、改善、人材育成、組織的支援~
 和田 憲明 氏 (富士通株式会社、アジャイルジャパン実行委員、
       情報処理推進機構(IPA)アジャイルWGメンバ)


私が東芝に入社して7~8年目の頃から数年、私の上司(チームのリーダ)は内平先生でした。その当時、内平先生と私の研究テーマは直接関連はありませんでしたが、成果物のレビュー、学会投稿や発表に関するサポートなど、いろいろとお世話になりました。初めての海外出張はドイツのベルリンで開催されたICSE1996だったのですが、内平先生も参加していて、現地でたくさん面倒を見ていただきました。今でも感謝しています。

ミニ講演後のパネルディスカッションでは、参加者からたくさんの質問がありました。それを、司会の端山さんがうまく選びながら、講演者からの回答と議論で進めていきました。私自身はとても面白かったのですが、場を揺さぶるような発言が出来なかったなぁ、と少し反省しています。普段思っていないことは言えないので、なかなか難しいのですが、次回、このような機会をもらえた時には、他の講演者と同じような意見にならないように、多様な意見があることを示せるようにしたいと思いました。

ミニ講演で使ったスライドを紹介します(↓)
ソフトウェア品質をめぐる諸問題とプロセス改善
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25. 国際P2M学会秋期研究発表大会の論文作成

後期の開始は9月28日(月)からだったので、9月中はまだ夏休みという感じで過ごしました。夏休みとはいえ、後期の授業の準備、組込み適塾や企業などでの研修コースの開催などで結構忙しい日々を過ごしてました。そのほかに、毎週、博士課程の今野さんと国際P2M学会秋期研究発表大会に投稿する論文の内容について議論を重ねました。毎回、1~2時間かけて議論や調査をするのですが、いろいろな発見や気づきがあり、とても充実した時間でした。 作成した論文は、国際P2M学会主催の2020年度秋期研究発表大会に投稿しました。論文のタイトルは「P2Mを活用したプロセス改善活動推進フレームワークの提案」です。これは、私の論文「大規模組織におけるソフトウェアプロセス改善活動の適用評価 — 10年間の実践に基づく考察」などいくつかの論文をベースとして、ソフトウェアプロセス改善活動における現状と課題を整理したうえで、P2M(Project and Program Management)の考え方を活用したプロセス改善推進のためのフレームワークの作り方と使い方を提案したものです。

秋期研究発表大会は、10月17日(土)に開催されました。今回はオンラインでの開催だったので、投稿した論文の発表動画を事前に作成、当日以降約2週間の期間に聴講してもらう、という形式でした。発表者の中から数名が発表奨励賞を受賞するのですが、嬉しいことに、今野さんの発表が「発表奨励賞」を受賞しました! この受賞に関する概要は、活動を参照してください。

研究室を立ち上げてから2年半が経ちましたが、初めての受賞でした。素直に嬉しいです。研究活動が思ったように進められていないのですが、これをきっかけに、うまく進められるように出来たらいいなと思ってます。定期的に議論を重ねることの大切さをあらためて感じました。幸いなことに、来年も数名の学生が修士に入ってくれそうなので、いろいろなことができそうな気がしてます。私も一緒に学びながら、みんなと一緒に成長できるように頑張ります!
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24. 日本信頼性学会誌「信頼」へ寄稿

日本信頼性学会誌「信頼性」Vol.42No.42020. 7月号(通巻254号)に、「大学におけるソフトウェアの信頼性・品質技術教育の実践」という記事が載りました。今回のテーマは、「信頼性分野の教育方法と研究のつながり」でした。本学の秋葉先生から依頼を受け、今、私が担当している授業の内容をまとめたものです。

以下は、寄稿した記事の「概要」です。


複数の固有技術領域を含むシステムが増えていることから,複数技術領域を統括する方法の教育が重要である.専門家を育成するための体系的な教育も必要であるが,若い世代である大学生に対して信頼性・品質技術教育を実施することが,信頼性・品質技術を広く普及し,日本の技術立国を担う人材の育成に寄与すると考える.大学生への信頼性・品質技術教育では第一に品質意識の動機づけが重要である.さらに,信頼性・品質技術を体系的に理解したうえで,それらの技術の必要性や有用性を実践の中で実感できることが重要である.本稿では,千葉工業大学 社会システム科学部 プロジェクトマネジメント学科の学部1年生から3年生までの期間で実施しているソフトウェアの信頼性・品質技術に関連した教育について報告する.プログラミング経験が浅い学部学生に対して,知識を積み上げ,ソフトウェア開発PBL(Project Based Learning)において教育の中で得た知識を活用している事例を紹介する.


以下の図は、現在、私が担当している講義とその講義で狙っている事をまとめたものです。PBLでの実習と演習も含めて、ソフトウェアの信頼性・品質技術を伝えるためによい講座を受け持つことができたと感謝しています。今後、これらの教育の内容をより良いものにして、ソフトウェアの信頼性・品質技術を理解し、実践できる能力を持つ人材の育成に寄与していきたいと思います。

信頼性・品質技術
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23. コロナの影響で変わった事(オンライン授業の進め方)

私は、大学に移って3年目で、担当している教科はソフトウェアの品質管理や開発管理、要求や設計(UML)といった内容です(リンク先の担当科目を参照)。工業大学ですが、社会システム科学部はバリバリの理系という感じではありません。ソフトウェアは分からない、プログラミングは得意ではない、という学生も多いです。今までも、具体的な事例を説明したり、演習問題を出してみたり、時々ワークをしてみたり、ということをしてきましたが、一方通行感があり、「こんなものかな~」という感じになっていました(期末のアンケートはそんなに悪くはないのですが)。

昨年、今年から授業は1コマ2時間で実施する、ということが決まっていました。その意味では、新型コロナウィルス感染拡大の影響があろうとなかろうと、講義の進め方を変えなければいけないという状況になっていました。しかし、どう変えたらいいものか結構悩んでました(私でも悩む時はある…)。結果として、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、変えざるを得ないという状況になり、次のような方針で進めることにしました。
  1. 講義はライブで実施する。ビデオでは行わない。
  2. ライブは40~50分にする。
  3. 課題を必ず出す。頑張れば、授業中に終わるようなボリュームにする。
  4. 課題の提出は、講義の3日後まで。
  5. 課題の回答と解説、学生からの解答例の紹介や質問への回答は次の講義の冒頭で行う(15~20分くらいはかかる)。
  6. インタラクティブ感を持つために、Zoom の投票を使う。あと、音声では、TAとして出席している修士、博士の学生に問いかける。
例えば、ソフトウェア開発管理では、数ページの文献やコラムを読んでもらい、感想や質問を書いてもらうのですが、とても面白いし、しっかりした内容なのです。提出後に読んでみると、「このように捉えているのか」「このような考え方があるのか」「その発想は思いつかなかった」という感じで、本当に楽しく、面白く読んでます。

私の一方的な思い込みかもしれませんが、学生とのやり取りが増え、講義の内容も濃くなり、教員と学生の両方の満足度も高くなっているのではないかな、という事を感じてます。今期末のアンケート結果がひとつの指標になると思います(アンケート結果が高いものは、グットレクチャー賞とかベストテーチャー賞の候補になります)。

さらに、大学では数年前から manaba という、クラウド型支援サービスを導入していたのですが、私は使ったことがありませんでした。しかし、使わざるを得ない状況になってしまいました。使ってみると、これが思った以上にいいのです。講義資料のアップやレポートの管理・採点は当然できるとして、それ以外にも、小テスト、アンケート、プロジェクト(グループワークをサポートする仕組み)などもあり、使わない手はない、という感じなのです。

教室で授業ができるようになっても、オンラインとの組合せで実施するというイメージが見えてきました。今はいろいろと難しい状況ですが、何かを変えるきっかけになるということが実感としてよく分かった気がします。

授業のスタイルとして、ライブかビデオの大きく2つに別れてます。私は、ラブを選びましたが、ビデオだったらどうだったのか、それはちょっと分かりません。同じように変わったかもしれないし、今まで以上に一方通行感が増してしまったかもしれません。また、ライブやビデオの映像なしで、テキストだけという時があってもよいと思います。まあ、授業の内容によって切り分けるのだと思います。

講義もようやく半分が終わったところなので(この原稿を書いているは6月下旬)、これから残りの半分をこなしてみて、その結果どうだったのか自分なりに振り返ってみたいと思います。
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22. ソフトウェア・シンポジウム2020 を開催しました!

ソフトウェア・シンポジウム2020(SS2020)を開催しました。すべて Zoom を使ったオンラインで開催しました。始める前は本当にうまくいくのか不安もありましたが、大きなトラブルもなく(小さなトラブルは多数発生しましたが…)、無事終えることができました。

昨年末~今年の1月頃までは、盛岡で開催できるだろうと考えていましたが、新型コロナウィルスの感染が拡大してきたため、2月下旬~3月上旬には、オンラインで開催することに決めました。参加費は、実際にかかる費用(講演料、Zoom契約料、雑費)をまかなえる程度の額に設定するという方針で決めました。参加者の一番のボリュームゾーンであるソフトウェア技術者協会(SEA)会員の参加費は、早割で3,000円、通常価格で4,000円としました。

ソフトウェア・シンポジウムは、毎年、都心以外のさまざまな都市で3日間という期間で開催しています。そのため、3日間会社を空けることはできない、出張申請を出すのが難しい、といった理由で参加したくてもできない方々がいました。しかし、今年は、いつもの年だと参加できない方々も参加してくださったおかげで、過去10年間では最も多い162名という参加者数となりました。採択された論文は22件で、内訳は、研究論文 10件、経験論文 2件、例発表 7件、Future Presentation 3本でした。ワーキンググループとチュートリアルを合わせた数は8件でした。

毎年、会場や懇親会の場で、「元気ですか?」「 最近どうですか?」と一言、二言だけでも言葉を交わすことがどれだけ大切な事なのかを実感しました。やっぱり、その場で集まって、馬鹿話を含めて議論することが大切だなぁ、と思いました。もちろんオンラインの良さもありました。特に、論文発表をじっくり聴くにはオンラインの方がやりやすいと思いました。Future Presentation で行っている双方向の議論も、チャットを交えながら行うことで、いつも以上に内容の濃いものになっていたと思います。司会者については、リアルな会場での議論でも、オンラインの議論でも、司会者の重要性には変わりはありませんでした。

今回は Zoom を活用して開催しました。オンライン会議を開催するうえで注意することを最後にまとめておきます。
  • Zoom は、年間契約と月単位の契約は混在できない。イベント用にホストを用意するには、新規のユーザで月単位の契約をするとよい。
  • 100名以上の参加者が見込まれる時は、大規模ミーティング(500名まで参加)をアドオンすればよい
  • Web サイトで 複数の Zoom の URL を提示する場合は、それぞれの Zoomが別物であることを分かるようにした方がよい
  • Zoom 入室時の設定を間違えないようにする(今回、参加者をミュート設定にするのを忘れてしまったセッションがあった)
  • 発表者がセッションに入っている事を確認できるように、時間に余裕を持たせた方がよい
  • 当日のセッション開始前に、発表者の音声と映像に問題がないことを確認するようにする
  • 印刷した原稿を読んで発表や講演をする際には、本番環境と同じ環境を作り、どの程度雑音が入るのかを事前に確認しておいた方がよい。今回、原稿がファンの風に当たり、雑音が入ることがあった。
  • 論文発表時に、発表者も含めてそのセッションに参加している方々が発表時間を確認できるような工夫があるとよい
来年は大分で開始する予定です。みんなで会場に集まり、ワイワイガヤガヤと議論できる事を願ってます。また、オンラインで参加したいという要望も当然あると思いますので、会場とオンラインのハイブリッドの開催も検討しなければいけないと思っています。
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21. 国際P2M学会 春季研究発表大会 大会開催の中止

国際P2M学会では、毎年、春と秋の年2回、研究発表大会を開催しています。今回は、4月25日(土)に千葉工業大学 (千葉県習志野市)で開催予定でしたが、新型コロナウィルスの感染拡大状況を踏まえ大会開催は中止となりました。一方、大会予稿集は、大会開催の有無にかかわらず、学会の継続性を鑑み当初の予定どおり投稿を受付け、予稿集電子版として4月下旬に発行致しました。

この春季研究発表大会の実行委員長はプロジェクトマネジメント学科の関先生で、副実行委員長が私でした。

今回、新型コロナウィルス感染拡大の影響で大会開催を中止としましたが、そこに行き着くまでの経緯などを残しておきたいと思います。以下は、国際P2M学会誌「P2Mマガジン【第9号(FREE)】 (発行:2020/08/15)」に載せた大会顛末記からの抜粋です。

■大会開催中止決定までの経緯

本大会は2020年4月25日(土)に開催される予定でした。例年どおり前年の年末(2019年12月20日)には大会開催のお知らせを発行しました。大会のテーマは、「デジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速するP2M」としました。12月~1月の間は、新型コロナウィルスは日本には関係のない話という雰囲気があり、4月の大会開催には大きな支障になるとは思っていませんでした。しかし2月に入り、横浜港に到着していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」から感染者が確認され始めた頃から雲行きが怪しくなってきました。

2月上旬の2月6日には、千葉工業大学で「国際P2M学会 ビギナーズ・セミナー」を開催しました。東京から離れ、夜間の開催にもかかわらず約20名が参加し、活発な意見交換が交わされました。ビギナーズ・セミナー開催前に、パネルのモデレーターとパネラーが集まり、パネル討論に関する内容や進め方について議論をしました。この頃までは、大会開催が中止になるとは想像していませんでした。

2月中旬の2月14日に、「R&Dプロジェクトマネジメント・シンポジウム」が満員の参加者のもと千葉工業大学 東京スカイツリーキャンパス(ソラマチ8階)で開催されました。この時期から、新型コロナウィルスの影響でさまざまな催しが中止あるいは延期となってきました。しかし、本大会の開催日の4月25日までには多少の余裕があることと、世界的にはある程度ピークを迎えようとしているという見立てもあり、開催中止あるいは延期ということに現実味はなかったように思います。そのため、しばらくの間は静観し、国内で大流行などの兆候が見えてこない限りは、予定通り予稿〆切は3月中旬として進め、3月下旬の理事評議員会で確認していただく、という計画をたてていました。

しかしこの頃から新型コロナウィルスの感染が世界的に広がりを見せ始めてきました。そこで、2月下旬の2月27日に本大会の開催について、「今後の状況を見極めたうえで予定通り大会を開催するか、あるいは中止するか、3月24日に決定することになりました」というお知らせを会員向けおよび学会ホームページに発信しました。このような内容を発信するためには、開催中止となった場合の代替案の策定などが必須です。2月25日午後から26日午前の間に、50件以上ものメールのやり取りを行い、運営側での合意形成を図りました。

その後、新型コロナウィルスの感染拡大に歯止めがかからず、上記のお知らせの発信から約1ヶ月後の3月25日に投稿者への方々へ中止のお知らせを発信しました。その後、3月27日に「第29回 国際P2M学会 春季研究発表大会開催中止と予稿集発行等に関するお知らせ」を会員向けに発信し、学会ホームページに掲載しました。

このような一連の判断と発信をしてきましたが、この判断の基準としたものは、大会の「開催」中止はやむを得ないが、第29回大会としては成立させるということでした。これは、学会としての継続性を維持するとともに、学位や資格実績取得を目指している投稿者への事を考えた結果定めた基準です。また、ステークホルダーを含めた議論と迅速な判断を下すためには、入念な準備とリーダシップが必要となります。その中心となったのが、大会企画委員長の久保裕史氏(国際P2M学会副会長、公益社団法人 JAPAN of ASIA 代表理事、当時は千葉工業大学教授)でした。短期間で議論を重ね重要な判断を下し、大きな混乱もなく大会を成立できたことは、大会企画委員長・副委員長、大会実行委員長・副委員長、開催校事務局という大会開催のための体制がうまく機能し、各担当がそれぞれの持ち場で着実に任務を遂行した結果であるということを合わせてお伝えしておきます。
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20. ソフトウェア・シンポジウム2020 オンライン開催決定!

新型コロナウィルスの感染拡大を受け、2/7(金)に開催したSEAフォーラムを最後に、ソフトウェア技術者協会(SEA)関連のイベントやソフトウェア・シンポジウム2020(SS2020)の実行委員会、SEA幹事会は、Face to face での会議を中止し、すべてオンライン会議に移行しました。

2月~3月は、ソフトウェア・シンポジウムに投稿された論文の査読やシンポジウムの企画検討などがあり、今年の実行委員長である野村さん(岩手県立産業技術短期大学校)、プログラム委員長である日下部先生(長崎県立大学)、河野さん(ディー・エヌ・エー)、事務局の栗田さん(ソニー)、インフラ担当の中野先生(中野秀男研究所)、ひろのぶさん(usp lab.)、基調講演担当の本多さん(東京エレクトロン)達と定期的にSS実行委員会を開催しました。最初は、5月連休明けに現地で開催するかどうかの最終的な判断をしようと思っていましたが、3月に入ってからの感染者数の増加状況から、現地での開催中止を決め、オンライン開催とすることにしました。毎年楽しみにしていたイベントが開催できないのは、本当に寂しいです。

投稿された論文の査読も終わり、プログラムの企画とオンライン開催の計画を準備して、4/10(金)の午後、プログラム委員会を開催しました。これもZoomで開催しました。当日は、30名以上のプログラム委員の方々が参加してくれました。いつもと同じように査読結果の審査をしっかりと行えたと思います。その後、プログラムを検討し、オンライン開催の計画を伝えました。

ソフトウェア・シンポジウムは今年で40回目の開催という記念の年でした。過去の歴史は、SEA ソフトウェア・シンポジウムの歴史を参照してください。今まで、日本各地を巡ってきましたが、今年は初めてのオンライン開催となります。盛岡で開催できないのは残念なのですが、気持ちを前向きに切り替えて、初めてのオンライン開催を多くの方々に楽しんでもらえるように、これから準備作業を開始します!

今年のソフトウェア・シンポジウム2020は、6/17(水)~19(金)にオンライン開催します。5月連休明けにはプログラムを公開し、参加者募集を開始する予定です。今まで、開催時期や開催場所の関係で参加できなかった方々にもぜひ参加してもらいたいと思っています。中身の濃い発表と議論を楽しめます! みさなまの参加をお待ちしております。
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19. 小笠原研最初の卒業生

2月7日(金)に、小笠原研究室1期生の卒業研究発表会がありました。2018年4月に着任して、その2日後に、3年生のオリエンテーションがあり、そこで研究室配属の希望を集めました。そのオリエンテーションの時に初めて研究室紹介をしましたが、当然のことながら私の研究室を志望する学生はほとんどいませんでした。第一希望が通らず、私の研究室に配属となった学生もいましたが、最終的には私の研究室に9名の学生が配属となりました。

それからはあっという間の2年間でした。

3年生の前期には3人でプロジェクトチームを作り、約4ヶ月をかけてWebサイトを開発するというプロジェクトマネジメント演習を行いました。このプロジェクトマネジメント演習で目指すことは次のとおりです。

・PMツール・技法を応用する技能を習得する
 - 基礎的な知識は、当然身に付いていることが前提
・ITシステム開発の基礎力を習得する
 - 小規模なWebシステムを自力で開発できる程度を想定
・ビジネス初級レベルの情報収集力・思考力・発信力を習得する

工業大学の学生なので、PCを使いこなし、プログラミングもある程度出来るのかなと想像していましたが、そんな事はなく(^^;)、いろいろと大変でした。しかし、そのおかげで、PHP+データベース(MySQL)を使ったWebサイトの開発方法をある程度習得できました(^^)

3年の後期は課題研究を行いました。9月に研究テーマを決め、10~11月と研究を進め、12月にポスター発表を行うというスケジュールでした。ゼミの中でうまく進めていきたいと思っていたのですが、どうもうまくいきませんでした。学生達の興味をうまく引き出すことは難しいということを感じました。

9名全員が4年生に進級できましたが、結構ヒヤヒヤものでした。春休みに週一回の勉強会も企画しましたが、これもあまりうまくいきませんでした… 4年の4~6月頃は就職活動が中心となりました。ゼミの日に説明会や面接が入るということもあり、ゼミをどのように行えばよいのか、いろいろと考えさせられました。

そうこうしているうちに、あっという間に夏が過ぎ、4年生の後期が始まりました。残るは卒業研究です! 10月に中間審査を行い、2月に最終発表会です。これまでうまくいかない事が続いてましたが、卒業研究もあまりうまく進められなかったという気持ちが強いです。でも、最後はみんな頑張って、60ページ以上の卒業論文を書き、しっかりと発表してくれました。小笠原研究室1期生9名の研究テーマは、次のとおりです。
  • メトリクスの活用をナビゲートするプロセスの開発
  • ソフトウェア信頼度推定ツールの開発
  • ゲーミフィケーションの事例分析及び進捗報告手法の提案
  • テスト自動化ステップの導入ガイドの開発
  • プロセス改善推進のためのガイドの開発
  • 初心者向けプロジェクト管理プロセスの提案
  • 組み合わせテストにおける不具合インタラクションの特定に関する研究
  • 操作順序を考慮した組み合わせテストの研究
  • “売れる”営業チームマネジメントの研究
この2年間、うまく進められないことも多くありましたが、無事卒業できて良かったです。新型コロナウィルスの感染拡大の影響で卒業式と謝恩会が開催できなかったのは、残念でした。

みんな卒業研究は大いに苦しみましたが、とにかく元気で面白い4年生でした。特に、LINEのやり取りは面白く、4年生のグループLINEでよく笑わせてもらいました。また、研究室に入る前に、私の部屋に寄って話をしてから、研究室に入っていく学生も多くて嬉しかったです。これから、とにかく頑張って欲しいと思います。これからの彼らの人生が素晴らしいものでありますように!

Heaven helps those who help themselves!
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18. IoT時代のアプリ開発を考える

ソフトウェア技術者協会(SEA)主催のSEAフォーラムを開催しました。今回は、組込みソフトウェアの世界で長年に渡り活躍中の二上さんに講演をしていただきました。二上さんは現在、(株)東陽テクニカ R&Dフェローであり、信州大学 工学部客員教授でもあります。東陽テクニカ 軽井沢ラボの活動状況は、次のサイトから参照して下さい。 講演のタイトルと概要は次のとおりです。
  • 講演のタイトル:IoT時代のアプリ開発
  • 概要:前世紀は,企業の国際化が進みながらも,白もの,箱ものなど製品の商品企画から開発までが一つの会社,事業所など狭いが密な関係の人々だけで作業ができた時代でした.しかし,最近のものづくりではIoT技術とIT環境の発展によりこれまでとは違う機会が生まれつつあります.疎な関係の上でのグローバルなニーズを狙ったものづくりについてヘルスケアの事例をベースにお話しをします.
2000年頃から日本国内で利用する計測器が売れなくなってきて、日本で売って、海外に出荷するというパターンが増えてきた、という話から始まりました。そうなると、海外に拠点を出すとか、海外のユーザにどのようにトレーニングするか、ということを考える必要があり、東陽テクニカでも海外での活動が増えてきたそうです。また、今まではスペック重視で製品開発をしていればよかったのが、海外でのニーズを元に検討しなければいけなくなったことで、次製品の検討が難しくなってきた、とのことでした。

2018年平昌オリンピック500mで金メダルを取った小平奈緒選手との関係も深く、小平選手の活躍の一端を担って いるということでした。詳しくは、こちらこちらを参照してください。

今回のメインテーマは、グローバルなニーズを狙ったものづくりの話でした。IoT技術とIT環境の発展によって、これまでとは違うものづくりの機会が生まれていることを、ヘルスケアの事例をベースに説明をしていただきました。ご存知のとおり、現在は長寿命社会であり、その中でも日本は世界の中でも最も早いペースで高齢化社会を迎えています。高齢者が病気をすると、典型的には以下のようなパターンになると言われています。 このステップを防ぐには、医療(薬)に頼って元気を取り戻すということではなく、病気にならない努力の方が効果的と言われています。しかし、このような状態になってしまうのを防ぐためのシステムを開発しようとすると、一筋縄ではいかず、複雑なシステムが必要となってくるということが想像できます。このようなシステムは、センサーや装置を開発している会社だけで考えられるようなものではなく、広い視野でシステム化を検討しないと実現できないものです。広い視野の例は、次の図を参考にしてください。

IoT_System

上述した図が実現した際のマーケットは「明らかに巨大で複雑」です。このよ うな状況の中、日本は世界の先端テストベットを保持している立場です。この 課題(広い視野でシステム化をするには)に対して、今は、世界中の方々と一 緒に考えながら開発するスタイル( 伽藍とバザール)で立ち向かっていました。具体的には、IIC(Industrial Internet Consortium)Healthcare Task Groupに参画し、そこでいろいろと議論をしているとのことでした。この Task Group の目的は、上述したような高齢者が陥りやすいパターンを防ぐためのインフラを構築する、ということです。現在、日本国内でのチーム作りも進行しているそうです。二上さんは、2014年から、IIC(Industrial Internet Consortium)の日本リエゾンを担当しています。

最後に、このIICでのWGの活動状況や実際にどのように議論がなされいているか、という説明がありました。定期的なWeb会議を開催して、議論を深めながら、具体的な活動に落とし込んでいくという方法は、日本人にとっては苦手な領域かもしれません。しかし、IoTシステムを開発するには、IICで行われているこのような世界に入っいき、グローバルなニーズを狙ったものづくりが実現できるかどうかが今後のポイントである、というコメントで講演が終わりました。

講演後の質疑応答では、「インフラ」とは何か、というところで議論が盛り上がりました。見方を変えれば、“人々”を監視するためのインフラだよね、というコメントもありました。情報化社会には常につきまとう話題ですが、得られた情報をどのように使うのか、どのように生かすのか、という事とセットで常に議論を進める必要があるということを再認識しました。

講演後は、いつものとおり、懇親会を開催しました。楽しかったです。参加者は、中野先生ひろのぶさん新森さん奈良さん、二上さん、私の6名でした。中野先生から「みんなでワイワイやっているところがいい。このプロジェクト(IICのHealth Task Group)、うまくいくんちゃう。日本にインターネットを導入しようとしていた頃の雰囲気と似ている」という言葉が印象的でした。
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17. 継続することの大切さ! SS2020のロケハンに行ってきました

今年、ソフトウェアシンポジウム(SS2020)は盛岡で開催します(私の地元岩手県での開催です!)。会場は、いわて県民情報交流センター(アイーナ)です。今回、現地視察(ロケハン)をしてきました。実行委員長の野村さん、奈良さん、栗田さん、三輪さん、岩手県立大学の市川先生、それと私の6名の参加者でした。

会場のアイーナは、とてもきれいで解放感があり、素晴らしい会場でした。基調講演を行う小田島組☆ほ~るホールも広く、設備も充実していて、これもまた素晴らしいホールでした。6月の開催が楽しみになってきました。また、懇親会の会場であるマリオス(アイーナの隣のビル)の展望室(20F)から見る景色は最高でした。懇親会は、展望室にあるレストランで開催です。

お昼には焼肉と冷麺を食べ、ロケハンのあとはじゃじゃ麺を食べました。どちらも美味しかったです。夜は、姪がアルバイトをしている盛岡酒場にっかつとその隣にあるアイリッシュ・パブ SUNDANCEに行き楽しい時間を過ごしました。

翌日は、野村さんに高松公園岩山公園盛岡八幡宮を案内してもらいました。盛岡には何回も来ているのですが、どこも初めての場所でした。高松公演では鴨と白鳥を見てきました。白鳥の足は黒いのですね。鴨にも種類があって(当たり前ですが)、それぞれに特徴がありかわいかったです。岩山公園から見る岩手山は最高でした! 岩山公園の山頂にある「喫茶GEN・KI」は、朝、日の出の1時間前から8時まで営業をしています。日の出とともに眺める岩手山は最高だそうです。今年のSSの期間中、ぜひ行ってみたいと思いました。夜景も素晴らしいとのことですので、夜景も楽しんでもらいたいと思います(私は、飲み会があるので、夜景ではなく、朝にします…)。

SSのロケハンには、2014年から毎年参加していて、私のロケハン地は、秋田市、和歌山市、米子、宮崎市、札幌、熊本市と続いています。ソフトウェア・シンポジウムは、1980年の1回目の開催後、ほぼ毎年継続して実施され、今回が40回目の開催です。詳細は、SEA ソフトウェ アシンポジウムの歴史を参照してください。毎年、SSが終わったあとの7~8月から次の開催に向けて動き出し、年末か年始にロケハンをするというのが、毎年のパターンです。ロケハンは“さあ、そろそろ積極的に動き始めるぞ”という合図にもなっています。周りから見ると現地視察をしているだけ、と見えるかもしれませんが、参加者にとっては、その地域を楽しみつつ、6月の本番に向けていろいろと考えるよい機会になっています。また、みんなで集まって参加することに意義があると思います。SEAに携わってきた多くの方々によって続けられているソフトウェア・シンポジウムを今後も継続していけるように、これからもロケハンを大切にしていきたいと思いました。楽しい2日間でした!

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16. FORCE2019 (12/14-15) を開催しました

三重県伊勢市の伊勢観光文化会館でソフトウェア信頼性研究会 第15回ワークショップを開催しました。

週末の休みの日にも関わらず、19名の方に参加していただき、充実した2日間を過ごせました。昨年に引き続き今回も、大学関係者6名、学生6名、企業からの参加者7名という構成で、とてもバランスが良く、活発な議論ができました。

住友電工情報システムの中村さんと野尻から「住友電工情報システムにおける統計的品質管理とその実践」というタイトルで基調講演をしていただきました。中村さん達が推進している活動は、プロジェクトマネジメント学会から2018年度PM実施賞奨励賞を受賞しています。また、SPI Japan をはじめ、いろいろなところで発表もされています。たくさんある中のいくつかを以下に紹介します。

文書作成支援ツールによる組織開発力の強化
信頼度成長曲線の導入による統合テストの改善

今回の基調講演は2部構成で、最初は、「自社開発ツールによる統計的品質管理の全社展開」というタイトルで中村さんの発表がありました。次に、「プロ ジェクトマネージャー支援サービスの構築」というタイトルで野尻さんからの発表がありました。どちらの発表とも、実践に裏打ちされた中身の濃い内容でした。中村さんの発表では、管理図を使った品質作り込みの事例の紹介もありました。ソフトウェア開発の現場で、これだけしっかりと管理図が使われている事例は少ないと思います。とても参考になりました。

発表は10件でした。すべての発表で活発が議論がありました。私にとってすべて興味深いものでした。学生の方々にも発表していただき、感謝です。学生の方々の発表は以下のとおりです。

・「時間ペトリネットを対象とした有界モデル検査の高速化とその評価」
 井川直,横川智教,有本和民(岡山県立大学)
・「関数単位のソースコードを入力としたドキュメント自動生成モデルの提案」
 塩津拓真,水野修(京都工繊大)
・「変数に着目した変更メトリクスによるフォールト混入予測とその評価」
 川上 卓也,阿萬 裕久,川原 稔(愛媛大)
・「プログラミング試験におけるカンニング検出に向けて」
 砂田翼,石尾隆,松本健一 (奈良先端大)
・「バグ票の類似度を活用したフォールト位置推定手法の改善に関する考察」
 安里 昌真,阿萬 裕久,川原 稔(愛媛大)
・「構成管理ツールにおける冪等性を持たないモジュールの利用形態解析」
 国領翔真,水野修(京都工繊大)

1年先の話ですが、来年もこの時期に開催する予定です。場所は未定ですが、岡山が候補として挙がっています。興味のある方はぜひお越し下さい。来年は、私も発表したいと思ってます(研究ちゃんとします)!
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15. SPI通信にエッセイを書きました

ソフトウェアプロセス改善シンポジム2019(SPI Japan 2019)で、JASPICから20周年記念 新聞「SPI通信」が発行されました。発行の趣旨は以下のJASPICメルマガの文章を参照してください。
───────────────────────────────
 ◆4. SPI通信の紹介
───────────────────────────────
JASPICは2020年に20周年を迎えます。これを記念し、JASPICをさらに
知っていただくために、20周年記念新聞「SPI通信」を発行します。
デジタル時代の今だからこそ、紙の新聞の手渡しと、気軽な会話から
生まれるコミュニケーションも大切にしたいと考えています。
今回、第1号が完成しました。既にSPI Japanなどで配布していますが、
広く読んでいただくために、「SPI通信」を職場などで配っていただけ
る方には送付いたします。(送料はJASPICで負担します。)
住所/氏名/部数(10部以上でお願いします)を次のアドレスにメール
してください。

newspaperアットjaspic.org

なお、現在第2号も企画中です。既にお読みの方はこちらもお楽しみに。
以下は、SPI通信に寄稿したエッセイです。紙面では写真も載ってますが、恥ずかしいので、ここには載せません(^^;)

■タイトル:“リズムの大切さとSEPGへのメッセージ”

JASPICは、2000年10月に設立されました。設立趣意書、松原友夫氏と坂本啓司氏(故人)からの設立に向けたメッセージは、次のURLから参照できます。2つのメッセージは、プロセス改善活動に関与する方々にぜひ読んでもらいたい内容です。

http://www.jaspic.org/basicDocuments/SPIshui.pdf

JASPICが立ち上がってから、例会、合宿、ソフトウェアプロセス改善シンポジウム(SPI Japan)が定例的な活動として私の中に入ってきました。これらの活動は、毎年ほぼ同じ時期に開催されるので、数年続けるとそのリズムが体にしみ込んできました。私の場合だと、このほかに、5月の派生開発カンファレンス、6月のソフトウェア・シンポジウム、夏の帰省、9月のソフトウェア品質シンポジウム、冬のソフトウェアテストシンポジウムが入ってきました。人間の体は不思議なもので、毎年続けているリズムが崩れると、その1年が何となく物足りないものに感じてしまいます。2008年の神戸で開催されたSPI Japanの時は、何故だか、私らしくもなく上長の反応を気にしてしまい、参加しませんでした。今となっては、とも悔やまれます。2003年から始まった SPI Japanに、この年だけ参加していないのです。みなさまには、会社生活の中で、“自分のリズムを確立し、そのリズムを最優先する”ということ強く推奨します。自分一人がいなくても、会社は回ります。もっと自分のことを大切にしてもよいと思います。

JASPICの活動の初期のフェーズでは、2006年5月に「熱海後楽園ホテル」で開催した合宿が思い出に残っています。合宿では、2日間集中して発表や議論をするのですが、夜は、懇親会のあと大きな部屋にみんなで集まり、朝方までお酒を飲みながら熱く議論しています。夜の議論が終わり私の寝る部屋に戻ると鍵がかかっていて入ることができませんでした。仕方ないので、エレベーター前のソファで寝入ってしまいました。そのうち、床に転がって寝ていたようです。この写真は、朝風呂に行く方々に撮られた写真です。

酔っ払いの恥ずかしい写真なのですが、このような写真が残っているということは貴重なことで、今は撮って下さった方に感謝しています。ここで目を覚ましたあと、お風呂場に向かいました。そこには、露天風呂があり、そこでまた寝入ってしまったようです。体が寒くなると、手でお湯をかけていたそうです。当然、JASPICの方々にも見られていたのですが、みなさん、起こすこともしないで、眺めていたそうです。今でも仲良くしていますが、とても優しい方々です(起こしてよ!)。このような事件のあった合宿ですが、毎年一回みんなで夜遅くまで深い議論をすることが楽しくて、その後も継続して参加しました。

2006年5月の合宿では、JASPIC初代理事長である岸田さんの講演がありました。講演タイトルは、「SEPGへの8つのメッセージ」でした。この時の内容は、その後のプロセス改善活動を推進する時の心構えのベースになりました。すべてのメッセージをここで紹介はできないので、いくつかのメッセージを紹介して、このエッセイを終わりにします。

■1番目のメッセージ:
われわれの状況は、大海の真中で自分が乗った船を修理しながら航海を続けなければいけない水夫みたいなものである。港に戻って、新しい船を最初から作り直せたらよいのだが、それはできない。(オットー・ノイラート)
ソフトウェアは?
20世紀前半の哲学の状況について述べたノイラート(ウィーン学派の代表的論客)のコトバは、ほぼそのまま、われわれソフトウェア・エンジニアにあてはまる。

■2番目のメッセージ:
言語は、たえまなく変化しつづける。変化しなければ機能しえない。(エウジェニオ・コセリウ)
ソフトウェアの宿命
ソフトウェアも、やはりたえまなく変化し続ける。ソフトウェアは、変化しない限り、その機能を果たすことができない。それは、社会プロセスの中に組み込まれたツールとしての宿命である。

■8番目のメッセージ:
ネットアートの世界では、コンピュータと通信技術の複合がオープンな制作の場を実現し、観客たちは、その上で行われる創作活動に自由に参加することができるようになった。アーティストは、伝統芸術における著作者ではなく、むしろシステムデザイナーのような役割をになう。さまざまなユーザたちが出会い、お互いの関係を発展させる場ができたことで、そうしたインタラクション・プロセスそのものが、創造活動のほんとうの「対象」と化すのである。したがって、そうしたプロセスを支えるシステムの機能が、きわめて重要になる。(エリザ・ジャカルディ)
プロセスとプロダクト
われわれの仕事は、プロダクトとしてのソフトウェアを作ることである。しかし、そのソフトウェアを使うのはわれわれ自身ではなく、ユーザである。われわれソフトウェア・エンジニアにとっての仕事のほんとうの目的は、ユーザの要求に応えてさまざまなプロダクトを作るためのプロセスをどうしたらよいのかを考えることなのだ。
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14. EuroSPI2019 (9/18-20) に行ってきました

5年ぶりに、EuroAsiaSPI2019に参加してきました。今年の開催場所は、スコットランドのエジンバラでした。飛行機の予約が遅くなり、少し時間がかかるルートになってしまいました。今回は、成田空港からドーハ空港経由でエジンバラ空港に到着しました。所要時間はそれぞれ7時間半、11時間半ですので、ドーハでの待ち時間も含めると、行きは約23時間、帰りは約19時間でした。結構疲れましたが、ドーハとエジンバラ間は結構空いていたので、思ったより楽でした。映画も沢山観ました。

今回投稿して採択された論文のタイトルは、"Historical Significance and Suggestions on Future Works of Software Process Improvement in Japan"です。内容は、SQIPシンポジウム2017【SQiP特別セッション】で発表した<<第3部>>プロセス改善の黒歴史 ~何を学び、どこへ向かうべきか?で発表したものをベースにしたものです。著者は、安達さん(HBA)、古畑さん(デンソー)、艸薙さん、伊藤さん(東芝)、小笠原(千葉工業大学)の5名です。日本では、SW-CMMの翻訳版が公開された1990年代の後半から、各社でのプロセス改善活動が広がりました。その後、盛り上がったり、停滞したりということを繰返しながら、現在に至っていると思います。毎年秋に開催されるソフトウェアプロセス改善シンポジウム(SPI Japan)では、毎年30件程度の発表があり、参加者も150~200名と安定しています。

この日本におけるプロセス改善活動の歴史を振り返ってみると、形式を整える(例えば、CMMIに準拠したプロセスの実装に偏りすぎている)、個人の経験や技術を元に効果を高めるという活動を行ったり来たりしていたという結論に達しました。具体的には、以下のプロセスモデル適合性-有効性評価座標で示した、形式的と属人的を行ったり来たりしている)。今回の発表では、形式も整え(モデルにも準拠し)、効果も継続的に得られるという理想の状態に到達するにはどうしたらよいか、という議論の結果を示しました。議論の結果はまだ提案レベルなので、その提案が本当に妥当なのかという検証まではできていません。

プロセス適合性-有効性座標

発表後の質疑応答は活発で、このような状況や理想状態に向けた方向性を議論することに対して懐疑的な反応はありませんでした。来年のEuroSPIでは、理想状態に向けた提案をより明確なものにして、その提案内容の妥当性も示せる ようにしたいと思います。

今年は日本からの参加者も多く、総勢で6名(奈良さん、笹部さん、伊藤さん、込山さん、古畑さん、小笠原)でした。エジンバラは観光名所なので見どころ満載でした。写真は、発表中のもの、街から撮ったエジンバラ城、観光後のお店の中の3枚です。楽しかったです。

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来年は、2020年9月9日(水)~11(金)の日程で、場所はドイツのデュッセルドルフです。来年も論文を投稿して、ぜひ参加したいと思います。参加者は、基本的に経験豊富な方が多いのですが、若手の研究者の方々もいて、発表や議論の内容は参考になることが多いです(聞き取れないことも多いのですが…)。一緒に行ってみたいという方は大歓迎なので、ぜひ声をかけてください。
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13. PM学会 秋季研究発表大会 (8/29-30) に参加してきました

プロジェクトマネジメント学会主催の2019年度秋季研究発表大会に参加してきました。春季研究発表大会、秋季研究発表大会、ProMACへ参加するというリズムが出来上がってきたような気がします。今回は、2つのセッションの司会と学生発表の評価という役割がありました。嬉しいことに、私の研究室から3名が発表しました。小笠原研究室からの初めて学会発表になりました!

私が担当したセッションの発表は次のとおりです。

担当したセッションでの発表(1)
  • PBLにおける目的優先度に基づくチーム編成案の改善に関する一考察
    玉田亮、下村道夫(千葉工業大学)
  • プロジェクトマネジメントの観点から捉えたスポーツ大会運営のあり方
    佐藤優之、酒森潔(産業技術大学院大学)
  • オフショア開発の効率向上に関する考察
    渡部淳一、南部広樹、呉建慧、清水理恵子(株式会社日立製作所)
  • 「IT経営を推進するための授業プロジェクト」の企画と実践および評価
    山戸昭三、五月女健治(法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科)
担当したセッションでの発表(2)
  • プロジェクトマネメント経験年数による仕事上の経験と行動特性の関連の比較
    三好きよみ(公立大学法人福岡女子大学)
  • 映画から学ぶプロジェクトマネジメント
    -プロジェクトマネジメント初学者向け学習方法の事例紹介-
    勝部逸平(株式会社エヌティティデータ北海道)
  • IT 成熟度の評価方法および評価訓練手法の研究
    福田大真、山戸昭三(法政大学)
どの発表も分かりやすく興味深い内容でした。法政大学の山戸先生、福田さんの発表は、中小企業のIT経営をより良くするための提案で、私としては、このような側面からの研究が進んでいるということが分かり、とても参考になりました。勝部さんの発表は、何というか、とにかく面白かったです。映画「七人の侍」を対象に、プロジェクト振り返りシートを書いてみたという内容です! 実際のプロジェクトで振り返りをするのが一番よいのですが、うまくできない状況もあるという現実もあり、それならば、業務以外での活動でプロジェクトの知識を深く学習するためにはどうしたらよいか、ということが問題意識でした。確かに、業務以外の事例で書いてみると、プロジェクト管理に関する知識体系がうまく頭に入ってくるような気がします。次の表は、勝部さんの論文に載っていた「プロジェクト振り返りシート」です(クリックすると大きく表示されます)。

プロジェクト振り返りシート

最後に、私の研究室からも次の3つの発表をしました。私は座長だったので、発表は聞けなかったのですが、みんな頑張ってくれました! 次回以降、投稿論文の質をより高くして、今回以上に自信を持って発表してもらえるようにしたいと思います。

小笠原研究室からの発表
  • PMBOKを用いたソフトウェア開発PBLにおけるインスペクション技法を用いた効果に関する研究
    榎戸啓人、今野祐紀、小笠原秀人(千葉工業大学)
  • トピックモデルを用いたテスト仕様の摘出に関する一考察
    今野裕紀、小笠原秀人(千葉工業大学)
  • テスト自動化ツールの実践を基にしたAI によるテスト自動化の考察
    清水祐作、今野裕紀、小笠原秀人(千葉工業大学)
“最後が”が2度繰り返してしまって申し訳ないのですが、千葉工業大学から発表した学生3名が、学生研究発表賞の学生優秀賞(小関さん、伊藤さん)と奨励賞(石川さん)を受賞しました。おめでとうございます!
  • 会議形態ごとのメンバーの相互理解プロセスの分析
    -行動観察,官能評価による対人認知状況のモニタリング-
    小関菜月,関 研一(千葉工業大学)
  • エンドユーザ要求の早期収集に向けた画面設計テンプレートの提案
    伊藤汐里、田隈広紀(千葉工業大学)
  • 地域コミュニティ活性化に向けた青年の主体的参加を促すネットワーク基盤の設計及び運営方法の提案
    石川直樹、下田篤、田隈広紀(千葉工業大学)
いくつかの写真をアップしておきます! お肉の写真は、塩ジンギスカンが抜群に美味しい塩成吉思汗『八仙』大通のものです。

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12. TCSE2018 JAPAN Track (7/29-31) を終えて

TCSE2019 JAPAN TRACKを千葉工業大学で開催しました。TCSE とは、Taiwan Conference of Software Engineering, Taiwan の略です。2019年の今年、15周年を記念して、日本の2つの団体(日本SPIコンソーシアム(JASPIC)とソフトウェア技術者協会(SEA))とのジョイント・カンファレンスという形態で開催しました。

私がJASPICの運営委員長をしていた4年前、台湾のTSPIC (Taiwan Software Process Improvement Consortium) の方が、SPI Japan に参加してくださったのが出発点でした。

次の年から、毎年5月頃に開催されるTSPICの年次大会に参加するようになりました。この年次大会には、TCSE (Software Engineering Association Taiwan)に所属する大学の先生方も多く参加しています。昨年のTSPIC年次大会の時に、TCSE2019 を日本で開催したいという要望があり、そこからいくつかの議論や打合せを重ねて、開催まで辿り着きました。

JAPAN TRACK は、7/29(月)午後の「テスト自動化ワークショップ」から始まりました。ワークショップでは、2つのツールを実際に動かしてみました。SideeXMagic Podの2つのツールです。ShideX は、記録した操作を完全に再現できることが特徴です。このため、今までは、テストの記録とは別に、合格条件などをせっていする必要がありましたが、記録をしたものがテストとして正しいのであれば、合格条件などを設定する必要はありません。もちろん、テストスクリプトなどを組込み、テストを拡張することもできます。Magic Pod は、画面のUIなどから、処理内容などを推測し、テストケースの生成をサポートできるところ特徴です。今後、テスト自動化に関する研究やコンサルティングを進める時のツールとして活用したいと思います。

7/30(火)の2日目は、本会議の日で、キーノートを2つ、3トラックでの発表セッション、バンケットという構成にしました。

オープニング後のキーノートは、Professor Alan Liu, Dept. EE, National Chung Cheng University, Taiwan のBuilding Intelligent Systems: a Case with Case-Based Reasoningでした。いろいろな事例を交えた分かりやすく、かつ、これからのAIについて考えることができる発表でした。

クロージング前のキーノートは玉井先生にお願いしました。玉井先生の発表は、On Software Paradigmというタイトルでした。今年の春に出版されたHandbook of Software Engineeringで玉井先生が担当した部分Key Software Engineering Paradigms and Modeling Methodsの内容をベースにしたものでした。パラダイムとは何か、ソフトウェア工学の世界でどのようなパラダイムが起きてきたのかをよく分かりました。そして、これからどこに向かっていくのかということを考えることができました。分かりやすく、示唆に富む内容でした。

台湾からの発表は、ポスター発表も含めて68件でした。日本からは、永田さん(サイボウズ)、林好一さん、河野さん(DeNA)の3名を招待し、逐次通訳付きで約1時間の講演をしていただきました。それぞれ、“Agile開発と品質”、“プロダクトライン”、“テスト設計”という得意領域の話題を提供していただきました。質問&議論も活発で、とても楽しい時間でした。

バンケットは大学から歩いて10分程度の場所にある、イタリア料理 マッセリアで開催しました。日本のイタリアンでおもてなしをしました。たくさんの方々に参加していただき、楽しいひとときを過ごしました。

7/31(水)の最終日は、11時頃まで発表セッションを行い、昼食のあと、片付けをして、企業訪問に向かいました。JASPIC運営委員長の遠藤さんと私で約25名を引き連れての移動は大変でした! 最初にインテックに行き、そのあと、DeNAに向かいました。インテックからは、「Promoting Data Utilization for Business」というタイトルで、AIを活用 したデータ分析技術とサービスに関する発表でした。池田さん、新森さん、北橋さんに歓待していただきました。インテック訪問後は、渋谷のヒカリエにあるDeNAに訪問させていただき、テストおよびDeNAが提供するさまざまなサービスについて紹介をしてもらいました。今回の企業訪問では、台湾の学生も多かったのですが、「AIが専門なのですが、インテックで求人はありますか?」、「DeNAで働きたいのですが、台湾からでも入社できますか?」といった質問もありました。台湾の学生によってもよい経験になったと思います。前日に引き続き、河野さんには大変お世話になりました。

参加者数は少なかったのですが、3日間のイベントを運営するというのは、かなりヘビーでした。今年の春から私の研究室に博士課程として所属している今野さんには、とてもたくさん助けてもらいました(^^)

もうやりたくないかと聞かれるとそんな事はなく、機会があれば、TCSEに限らず、違うイベントも開催したいと思います。大変さより、得るものの方が圧倒的に多いということを実感しました。あ~~~~~、でも、疲れました…
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11. システムテスト自動化ワークショップを開催しました

高品質ソフトウェア技術交流会(QuaSTom)「システムテスト自動化ワークショップ」を開催してきました。

QuaSTomは、東芝に入社後3~4年目からお世話になっている団体です。以前、副会長も担当させていただき、今は相談役として関与させてもらっています。今年の4月に、現会長の樋口さんから、QuaSTomの例会でワークショップを担当して欲しいというお願いがあり、事前の打合せをしました。その時に、樋口さんは、私の最近の活動状況などを調べてくれていて、“プロセス改善”というテーマでもいいのだけど、いつもと違う感じのものをやりませんかという提案から、“システムテスト自動化ワークショップ”というテーマに決まりました。自分が決めていたら、このテーマにはならなかったと思います。システムテスト自動化の内容を振り返り、新しい内容を加えることができ、とても良い機会でした。樋口さんに感謝です。

当日は、過去お世話になった方々にも参加していただきました。全体で20名程度の参加者がいました。テストの世界における“重鎮”の吉澤さんや東芝にいた頃一緒に仕事をしたことがある安孫子さんもいて、少し緊張しましたが、やってみるとそんなことはまったくなく、逆にこちらかの問いかけにうまく応えてくれるので、とても助かりました。3時間弱という時間でしたが、参加者とのやり取りも多く、私にとっても実りの多いワークショップでした。

ワークショップは、次の構成で進めました。
  1. テスト自動化の現状
  2. グループ討議(1)…自動化の取り組み事例、課題
  3. テスト自動化の取り組み
  4. テスト自動化を体感してみよう!
  5. テストセンター構想
  6. テスト自動化の実践結果
  7. グループ討議(2)…施策とロードマップを考える
  8. テスト自動化の留意点
  9. まとめ
アンケートでは、「実践・実装例についてどうすべきか悩んでいたので参考になりそうです」、「当たり前のことですが、“何でも自動化できるものではない”ということが改めて分かりました。またテスト自動化の過去も理解できました」といったコメントもいただきました。今回の内容をさらにブラッシュアップして、今後、このような要望があった時に応えられるようにしておこうと思います。

さらにありがたいことに、樋口さんが、このワークショップの開催案内とレポートを書いてくださいました。うまくまとまっていると思います。ありがたいです。開催案内は、ここから参照してください。レポートは、こちらから参照してください。

ワークショップ後は、QuaSTom 恒例のライトニングトークスがあり、その後、懇親会へと突入しました。懇親会では、シーズメッシュの本間さんと久しぶりに会いました。いろいろな方とたくさん話ができて、楽しかったです!
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10. プロセス改善の輪を広げる:TSPIC(台湾)との交流

5月25日(土)に、TSPIC(Taiwan Software Process Improvement Consortium)の年次大会に参加してきました。JASPICからTSPICの年次大会には、2016年から毎年参加しています。今年は、TSPICからの要望もあり、“派生開発手法XDDP”の説明をしてきました。XDDP(eXtreme Derivative Development Process)は、SPI Japan 2011 の基調講演、SPI Japan 2017 のパネル討論やチュートリアルなど、SPI Japan で何度も講演をしてくださった故清水吉男氏が開発した「派生開発の要求に合った開発プロセス」です。今では、この手法は日本国内では幅広く浸透し、多くの企業やプロジェクトで活用されています。その活用事例は、毎年初夏に開催される派生開発カンファレンスでも多数公開されています。

発表の時間は1時間で、逐次通訳をはさみながらの発表だったので、基本的な事をしっかり伝えるようにしました。最初に、追加と変更のプロセスを持つ派生開発向けプロセスXDDP、プロセス設計技術PFD、要求仕様化技術のUSDMを説明しました。次に、XDDPの変更プロセスでは、変更に着目した成果物として、変更要求仕様書、TM(トレーサビリティ・マトリックス)、変更設計書の3点セットが作られることを説明しました。最後に、XDDPの勘所として、要求仕様書の考え方やスペックアウトなどについて説明しました。発表後の質問も活発でしたので、参加者の方々にはある程度伝わったと思っています。

今回の年次大会には、約50名が参加していました。私の発表以外にも、「産学が連携してソフトウェア開発へAIを適用した事例」、「Pythonのオープンソース機械学習ライブラリであるscikit-learnの実践的活用方法」の2つの発表と、「パネル討論」がありました。パネル討論では、日本から参加したJASPIC理事長の赤坂さん、運営委員長の遠藤さん、小笠原の3名が参加して、AIの活用、アジャイル開発の動向など、いくつかのテーマで議論をしました。質疑応報も活発で、とても楽しい時間でした。

TSPICとの連携をきっかけに、今年は、7/29(月)-31(水)の3日間、日本の千葉工業大学で、TCSE2019(INTERNATIONAL JOINT CONFERENCE OF TCSE, JASPIC AND SEA)を開催することになりました。このカンファレンスでは、テスト自動化に関するワークショップ、台湾と日本からのキーノート、台湾からの論文発表、日本からの事例発表などがあります。興味のある方はぜひご参加ください。
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9. 菅野文友先生をしのんで

私の大学時代の恩師である菅野文友先生が、2019年5月5日午前11時11分に亡くなりました(享年91)。

エイプリールフール(4月1日)に産まれ、子供の日(5月5日)に亡くなりました。さらに、亡くなった時間は、11時11分という、すべてビットを立てた時間でした。忘れようと思っても忘れられません(^^;) 最後まで先生らしいのですが、こんなところで先生らしさを出さなくてもいいのに、と涙が止まりません。

思い返せば、大学に入学して「ソフトウェア」という言葉を始めて知り、ソフトウェア工学、ソフトウェア品質管理に興味を持つようになりました。先生の授業は怖くて(よく怒鳴ってました)、難しかった(数式をよく書いていたのを覚えています)のですが、何故だか先生に惹かれ、4年生の時に菅野研究室に入りました。

私が一番最初に書いたプログラムは、レシートのようなプロッタが付いているSHARPのポケット電卓で、ゴンペルツ曲線を書くプログラムでした。最初に覚えたプログラム言語はBASICでした。確か、先生の講義の宿題で、ゴンベルツ曲線のパラメータを推定せよ、といった問題が出たと記憶しています。グラフが表示できるのが面白くて、かなり集中してプログラミングしてました。

4年生と修士の頃は、実践の場をよく提供してくれました。私は、大学病院の先生と一緒にデータ分析を行ったり、インターンシップ先でソフトウェアの開発をする、といった経験をさせてもらいました。他の同期のメンバにも、それぞれの性格や能力を見極めて、適切な場を提供してました。「ソフトウェア工学は実学である」という先生の言葉どおりの指導だと思います。

大学時代によく言われた言葉としては、次の3つが心の中に残っています。今後、これらの言葉を、自分の言葉として説明し、学生に繰返し繰返し伝えていきたいと思っています。
  • ABC(当たり前のことを、ぼんやりせずに、ちゃんとする)
  • 源流の清め
  • 後工程はお客様
東芝を退職し、大学に移ると報告した時は、とても喜んでくれました。これからは、先生の姿を思い浮かべながら、先生から学んだことを学生にも伝えていきたいと思います。
菅野文友
菅野先生をしのぶ会で配布された資料
図書「ソフトウェア・エンジニアリング」と先生からいただいたサイン
先生、ありがとうございました。
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8. 改善できないエンジニア

今、私の担当している講義は前期2つ、後期2つあります(演習、ゼミ、卒論などを除く)。担当の一覧は、プロフィールのページの「担当科目」から参照できます。前期は3年生が対象の「ソフトウェア開発管理」と「ユーザ要求とシステム設計」で、後期は2年生が対象の「品質マネジメント」と「オペレーションリサーチ入門」です。

すべての講義で、学生に興味を持ってもらえるようにいろいろと工夫をしているつもりですが、実際には、なかなかうまくいかないことが多いのも事実です。もっともっと勉強し、工夫しなければいけないのだと思ってます。講義については、またどこかで書くとして、今回は、「ソフトウェア開発管理」の中で実施した内容を少しだけ紹介します。

「ソフトウェア開発管理」では、実際の開発現場で問題になることや、工夫しいることなどを説明しています。講義は、簡単な説明をしたあと、演習問題を個人あるいはグループで解くというスタイルで進めます。演習問題は、自分で作るものもあれば、情報処理技術者試験から選ぶ場合もあります。

今回、「ソフトウェア開発管理」の中で、演習問題ではなく、レポートとして、“改善できないエンジニア”をベースにしてストーリーを作ってもらいました。“改善できないエンジニア”は、勝呂さん(というか、高橋寿一さん)の図書「知識ゼロから学ぶソフトウェアプロジェクト管理」に載っています。

■改善できないエンジニア
森の中で木を倒そうと、一生懸命のこぎりをひいているきこりに出会ったとしよう。
「何をしているんですか」とあなたは訊く。
すると「みれば判るだろう」と、無愛想な返事が返ってくる。「この木を倒そうとしているんだ」
「すごくつかれているようですが…
いつからやっているんですか」あなたは大声でたずねる。
「かれこれもう5時間だ。くたくたさ。大変な作業だよ」
「それじゃ、少し休んで、ついでにそのノコギリの刃を研いだらどうですか。そうすれば仕事がもっと速く片付くとおもいますけど」とあなたはアドバイスする。
「刃を研いでいる暇なんてないさ。切るだけで精一杯だ」と強く言い返す

かなり面白いのレポートが多く、笑いながら読んでました。ここでは、ソフトウェア開発に関連したストーリーをいくつか紹介します。3年生の前期は、PM演習の中で数名のプロジェクトを組み、開発の最初から最後まで実践しているので、実感のこもった内容が多かったと思います。ここに書かれたような状況にならないように頑張ってもらいたいぁ、と思いました。

■要求
あるソフトウェア開発で一生懸命ユーザの要求に振り回されている人に会ったとしよう。
「何をしているんですか」とあなたは訊く。
すると「みると判るだろ」と、無愛想な返事が返ってくる。
「ユーザからの要望があれば、そのたびにシステムを作り変えているんだ」
「すごく疲れているようですが… いつからやっているんですか」あなたは大声でたずねる。
「かれこれ5回目だ。くたくたさ。大変な作業だよ」
「それじゃ少し休んで、ついでにユーザの要望を一番最初に洗い出したらどうですか。そうすればプロジェクトの遅延が減るとおもいますけど」とあなたはアドバイスする。
「ユーザ要望を洗い出す暇なんてないさ。聞くだけで精一杯だ」と強く言い返す。
■バージョン管理
あるソフトウェア開発で頭を抱えてソースフィアルの一覧を見ている人に会ったとしよう。
「何をしているんですか」
「見れば判るだろう」「この適当な名前ばかりつけられたフィルから正式版がどこにあるかを探しているんだ」
「いつから正式版のファイルを探しているんですか」
「もう2時間だ。どいつもこいつもキーボードを適当に叩いたような名前ばかり付けやがって。手がかりはアップロードした日時だけだ」
「それじゃ、チームの間でフィアル命名の基準を作ってバージョンの名前を書いてもらったどうですか」
「どうせあいつらなんて『完成版』『完成版レビュー済み』『提出版』『最終版』なんてファイルを量産するだけだよ」
■専門家のアドバイス
「すごく長い文章ですね… いつからやっているんですか」あなたは大声でたずねる。
「かれこれ7時間だ。くたくたさ。大変な作業だよ」
「それじゃ、少し休んで、ついでに専門家を呼んでみたらどうですか。そうすれば仕事がもっと早く片付くとおもいますけど」とあなたはアドバイスする。
「呼んでる暇なんてないさ。打ち込むだけで精一杯だ」と強く言い返す。
■ソフトウェア構造の見直し/プログラムの勉強
あるソフトウェア開発で一生懸命ソースコードを書いている人にあったとしよう。
「何をしているんですか」とあなたは訊く。
すると「みれば判るだろう」と、無愛想な返事が返ってくる。「このバグばかりのソフトウェアを作っているんだ」
「それじゃ、少し休んで、ついでにソフトウェアの構成を見直したらどうですか。そうすれば、バグが発生しにくくなるとおもいますけど」とあなたはアドバイスする。
「構成を見直している暇なんてないさ。開発するだけで精一杯だ」と強く言い返す。

あるソフトウェア開発でソースコードを書いている人がいた。
「ソースコードの勉強もせずに書いて大丈夫なんですか?」とあなたは訊く。
するとその人は「ソースコードの勉強をしている暇がないんだ」と答えた。
■道具、ツール
あるプロジェクトメンバーが表計算で一つ一つ電卓を使って計算していた。
そこで私は、「なぜ、関数を使わないのですか」とたずねると、
「そんなの知らないし、調べる時間がもったいない」と強く言い返されてしまった。
■ツール、環境
あるソフトウェア開発の会議で一生懸命予定を合わせ、会議室をおさえたり、会議室のセットアップ、セットダウンを行っていた。
「何をしているんですか」と訊く。
すると無愛想に「ソフトウェアのシステムについて会議を行う準備をしているんだ」
「それでは、スカイプのビデオ会議などのツールを使って会議をしてみては。準備や後片付け、部屋をおさえるなどの仕事が減り、効率的に話し合えますが」とアドバイスをすると
「対面で集まることに意味がある」と言い返す。
■思い込み
あるソフトウェア開発で一生懸命ソースコードを書いている人に会ったとする。
「手伝いますよ」とあなたは言うが、
「私にしかできないことだ」と返事が返ってくる。
「教えていただければやりますよ」と言ってみたが
「教えている暇はない」と言い返された。

新規性のあるソフトウェア開発で1人で一生懸命考えている人がいる。
「何をしているんですか」と訊くと、「みれば判るだろう」と無愛想な返事が返ってくる。
「新規性のあるソフトウェアを考えているんだ」と答えた。
「皆で考えてみたらどうですか」とアドバイスすると「あいつら仕事しないから無理」と言い返された。
■ルール
あるソフトウェア開発のプロジェクトを行っているメンバー達が、全員で同じ書類を確認していた。
「何をしているんですか」とあなたは訊く。
すると「見れば判るだろう」と、無愛想な返事が返ってくる。
「全員で書類の確認をしてミスを無くしているんだ」
「それじゃ効率悪くないですか。人数を減らして他の人は別の仕事をした方が良いとおもいますよ」とあなたはアドバイスする。
「しかしこれはプロジェクトの最初に決めたことだから」
■デスマーチプロジェクト
あるプロジェクトで進捗が上手くいってない人にあったとしよう
「何をしているんですか」とあなたは訊く
すると「みれば判るだろう」と無愛想な返事が返ってくる。「思うようにプロジェクトが進んでいないんだよ」
「すごく疲れているようですが… いつからやっているんですか」とあなたは大声で訊ねる。
「かれこれもう1ヶ月前からだ。そうしたって取り戻せそうにないし、コストがかさんでいる」
「それじゃ、少し休んで、メンバも休ませて、士気を高めたらどうですか。そうすればもっと上手く進むとおもいますけど」とあなたはアドバイスする。
「自分もメンバも休んでいる暇なんてないさ。EVMを弾き直して、進捗管理するので精一杯だ」と強く言い返す。
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7. ナレッジマネジメントについて考えてみる

活動のページでも紹介しましたが、3月中旬にプロジェクトマジメント学会の春期研究発表大会に参加してきました。初日は、司会や学生の方々が投稿してくださった論文の評価などがあり、やや緊張しながらの参加でしたが、2日目は特に役割はなかったため、楽しみながら発表を聴いてました。

その中で、IBMの若手のPM(技術者)の方の発表が印象に残ったので、何が印象に残ったのかを書き留めてみることにしました。タイトルと発表者は次のとおりです。
  • 金井駿也、プロジェクト人材の流動化に対する効果的ナレッジマネジメント、プロジェクトマネジメント学会 2019年度 春季研究発表大会予稿集(論文ID:2413)、pp247-250.
SECI モデルは、一橋大学の野中郁次郎名誉教授と竹内弘高名誉教授が著書「知識創造企業」(1996)の中で提唱したナレッジマネジメントにおけるフレームワークであり、暗黙知(個人が過去の経験から得た主観的な知識で、その個人でしか保持することができず、伝達することが難しい知識)は、共同化(Socialization)、表出化(Externalization)、連結化(Combination)、内面化(Internalization)の4 つの変換プロセスを経ることにより、形式知(言葉や文章や絵や数値などに表現された伝達可能な知識)に変換され、それを繰り返すことで組織におけるナレッジの高度化を図るというものです。このモデルは、有名なので、ご存知の方も多いと思います。

それぞれの変換プロセスは以下のとおりです。
  • 共同化:経験を共有し、人から人へと暗黙知を移転する
  • 表出化:暗黙知を形式知に変換して組織で共有化する
  • 連結化:形式知を組み合わせて新たな知を創造する
  • 内面化:創造された知を新たな暗黙知として習得するナレッジの人から組織への移転、表出化
SECIモデルの詳細については、「野中郁次郎・一橋大学名誉教授が語る「今の時代に求められるリーダーとは」を参照してください。

論文では、ナレッジの人から組織への移転、つまりSECI モデルでいうところの表出化における具体案として、3つ挙げていました。
  • コア領域とノンコア領域の切り分け
  • ナレッジの効果測定と有効活用
  • ナレッジ管理者の設置
一番良いと思ったのは、ナレッジ管理者の設置という提案でした。私が企業に勤めていた頃、ソフトウェアプロセス改善活動を全社的に推進していました。推進担当者はペアを組んで開発部門の支援をしていたのですが、推進担当者の経験や工夫はどうしても自分達だけのものになりがちでした。そこで、みんなの経験や工夫を共有するために、半期毎にみんなの活動記録や成果物の中から共有した方が良いものをピックアップしてまとめるというグループ(ナレッジ管理チーム)を設置しました。そして、まとめたものを、期末あるいは期初に報告して議論するという場を作り、みんなで共有を図りました。このことによって、個人、チーム、組織の幅が広がり、支援活動の改善にも効果があったと思います。残念ながら、効果測定という面では弱かったような気もします。

あと、“コア領域”と“ノンコア領域”という切り分けが斬新で面白かったです。企業にいた頃は、コア技術という呼び方をよくしていましたが、それは、担当する業務固有の技術や知識という使い方をしていました。しかし、この論文では、以下のように定義していました。

IT 企業及びPM の視点から見た場合、コア領域とは、技術的なスキルをはじめとして、コミュニケーション、ロジカルシンキング、ドキュメンテーション、プレゼンテーションといった一般的な知識やスキル領域のことである。一方、ノンコア領域とは、業界知識や慣習、業務に関する独自プロセスといった関連する組織やプロジェクトに属さない限り知ることのできない領域のことである。

この定義は目から鱗というか、私たちは視点を変えなければいけないという事を思い知らされました。確かに、今までコア技術と呼んで守っていた(と思い込んでいる)ものは、全体から見るとノンコア領域であり、本当のコア技術とは、上記に書かれているような事なのではないかと思いました。若い方々の視点は新鮮であり、大事にしないといけないということを実感しました。

今回の発表は提案まででした。発表後、私から、「ナレッジ担当を設置するのはとても良い。コア領域とノンコア領域の考え方は新しい気づきだった。次回は、実践結果をぜひ聞きたい。」というコメントをしました。

とても興味深い発表を聞けた2日間でした。2019年度秋期研究発表大会は、8/29(木)-30(金)の2日間、北海道の札幌で開催です。次回も楽しみです!
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6. ITパスポート、いいですね!

千葉工業大学の場合、授業は1月でほぼ終わり、卒論、修論のない学生は、2月から春休み状態です。今年は4年生がいないため、私も2~3月は結構時間があるはずなのですが、何となく慌ただしい毎日を送っています(^^;) 計画的に過ごさないと、あっという間に時間だけが過ぎてしまいますね。娘の大学受験も終わり、志望校に合格しました! 娘の勉強している姿を見ると、親も頑張らなければと強く思いました。

このような背景もあり、研究室の3年生に、ITパスポートの合格を目指して春休みの毎週火曜日午後に勉強会を開こうと提案してみました。最初、集まらないかなぁと思っていたのですが、9人中6人が手を挙げてくれました(就職活動もあるので、出席率はボチボチです)。

参考図書「情報処理教科書 出るとこだけ! ITパスポート 2019年版」を選び、過去問を入手して、毎週過去問を解いて間違ったところを復習するというスタイルで進めています。
購入した参考図書
毎週火曜日、学生と一緒に過去問を解いているのですが、恥ずかしながら、思ったより難しく苦戦しています。問題は、ストラテジ系(経営全般)、マネジメント系(IT管理)、テクノロジ(IT技術)の3つの領域に分かれていて、問題数は、35問、20問、45問程度の100問となっています。出題形式は四肢択一式で、時間は120分です(試験内容・出題範囲)。合格基準は各分野で60%以上の正答があり、かつ総合でも60%以上が正答のようです(単純に1問何点という配点ではないようです)。

私の場合、ストラテジ系とテクノロジ系が弱く(70~80%程度)、マネジメント系はまあ大丈夫(95~100%)という感じです。ストラテジ系の中では会計・財務、経営戦略マネジメントが弱く、テクノロジ系では、ネットワークとセキュリティが弱いという状態でした。会計・財務は大学の頃習ったはずなのですが、ダメダメですね。ネットワークやセキュリティも、頭では何となく分かったつもりでいたのですが、ダメダメでした。でも、分からなかった事を勉強して理解できると嬉しいですね。学ぶ事に年齢は関係ないということを実感しています。

実は、4月の情報処理技術者試験では、プロジェクトマネージャを受験するつもりだったのですが、申込み期限を間違えてしまって申し込めなかったので(本気で受けるつもりであれば間違えるはずがないので、言い訳に過ぎないです)、学生と一緒にITパスポートの勉強を始めましたが、逆に良かったかなと思います。ちなみに、情報処理技術者2種、1種、プロジェクトマネージャは大学時代~入社2年目までに合格していますが、出題内容も大きく変わっていると思い、プロジェクトマネージャは再受験しようと思いました(プロジェクトマネジメント学科なので、最低限、資格は持っておかないといけないかなと思いまして…)。

自分で解いてみて分かったのですが、基本的な事を幅広く理解するために、ITパスポートはとても良いと思いました。学生には、少なくとも卒業までにはITパスポートは合格してもらいたいと思ってます。馬力がかかれば大丈夫だと思ってます。私は、今年はITパスポートに合格し(落ちる事はないと思います)、来年、プロジェクトマネージャを受験することにしました。
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5. 業務設計とプロセス改善活動

今年度、建設業務を中心とした会社において業務設計に関する研修(1日7時間コース)を何度か実施しました。研修コースを開発するにあたり、業務設計の定義を以下のように定めました。
  • 業務設計とは、与えられたリソースであるインプットから要求されるアウトプットを出すまでのプロセスを、エラーが起きにくく、最短で実行でき、想定されるイレギュラーに耐えうるフローを描き出す作業のこと。とても複雑な作業であり、唯一の正解はない。状況が変わればそれに即したフローへとプロセスを組み換えなければならない。
上記の定義を真正面から受けとめると、“とても大変で難しい”と思う方が多いと思います。私もそう思います。しかし、この研修コースの開発に関与している方々に話を聞いてみると、業務設計の仕事の中には、以前に実施した同じような仕事が含まれているという話もよく聞きました。それならば、プロセスを整備し標準化を進め、その標準化したプロセスをベースにテーラリングをすればよいのではないか、という考えに辿り着きました。結果として、プロセス改善活動の考え方をベースにして、以下のようなプログラムにしました(グループ演習と講義は6対4という構成です)。
  1. 業務設計とは
  2. プロセスとは
  3. プロセスの構造と種類
  4. プロセスの表現方法
  5. プロセス定義の留意点
実際に研修を行ってみると、システムやソフトウェアの開発部門の方々に対して行ってきたプロセス改善の教育の評価や感想と大きな差はないように思いました。また、CMMIA-SPICEで定義されているプロセス(例えば、CMMIの要件管理プロセス)のいくつかは、業務設計の中でもうまく当てはまることも多いということが分かりました。 以下の図は、「能力成熟度モデルのキープラクティス 1.1版」(技術報告書、1993年2月、CMU/SEI-93-TR-25、ESC-TR-93-178)の 0-52 ページの 図4.1 と同じものです。図の中の“ソフトウェア”を“業務設計”に置き換えても、違和感なく読めると思います。今後、ソフトウェア開発に限らず、プロセスに関する相談や研修開催の依頼を受けた時には、この枠組みをベースにヒアリングや確認などをして、お客様の要望に近いものが提供できるようにしていきたいと思っています。
出典:能力成熟度モデルのキープラクティス 1.1版、0-52 ページ、図4.1
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4. 2018年12月:CMM と「CMMI Ver.2.0 の特徴と日本語化」

CMMI(Capability Maturity Model Integration:能力成熟度モデル統合)の新バージョンであるV2.0は、2018年3月に公開されました。
https://cmmiinstitute.com/cmmi

これは、2010年11月リリースのV1.3以来のメジャーアップグレードとなります。モデルの構成要素の変更や、アジャイル開発手法への積極的な対応など、モデル、評定手法、トレーニング体系が全般的に改訂されています。

日本SPIコンソーシアム(JASPIC)では、従来バージョンに引き続き、V2.0の日本語化についても開発元であるCMMI Instituteとの協力作業を進めていて、2019年春のモデルリリースを予定しているそうです。

JASPICから隔月に発行されている「JASPICメルマガ 2018年12月号」に、CMMMI Ver.2.0 に関する以下の記事が載っています。興味のある方はぜひ読んでください。
  • 2. イベント実施報告:SPIトワイライトフォーラム 2018年11月
  • 3. CMMI V2.0の特徴と日本語化
私は、1990年後半、当時の上司である、山田さん、艸薙さんからSW-CMMを教えていただき、ソフトウェアプロセス改善の世界に入ってきました。その頃、社内では、SW-CMMの内容を自分達の組織の言葉に置き換えたうえで、実際の活動と書かれていることを比較し、良いところ、改善が必要なところを定期的に評価し、その結果に基づいて、組織の改善活動を推進していました。

最初の頃は、のんびりとしたやり方だな、手法とかツールを導入した方がよっぽど効果があるのになぁ、などと思い、あまりよい印象は持っていませんでした。しかし、乘松さんがインストラクターをしていた3日間の「SW-CMM入門コース」を受けた当たりから気持ちが変わってきました。というのも、その当時私は、静的解析ツールや構成管理ツールなどの研究開発や導入推進をしていました。とてもよい技術であり、ツールなのですが、なかなか社内に広がらないという思いを抱いていました。

SW-CMMでは、各成熟度レベル(レベル1からレベル5まで)はキープロセスエリアで構成されています。それぞれのキープロセスエリアはゴールとキープラクティスか構成されています。そして、キープラクティスは、「実施のコミットメント」、「実施能力」、「実施される活動」、「計測と分析」および「履行検証」という5つのコモンフィーチャに分けられています。

各レベルで定義されているプロセスも、それまでの経験と照らし合わせると納得のいくものだったのですが、それ以上に、コモンフィーチャという考え方がとてもよいと思いました。

これらのコモンフィーチャーは、組織として制度化することが組織力向上の鍵となります。
組織力とは何でしょうか?
それは誰かが頑張ってうまくいくのではなく、誰もが当たり前にやってうまくいくようになることです。そのために大事なのが、制度面での工夫です。
  • プロセスを重視することに関する上級管理層のコミットメント(約束して)
  • 定義したプロセスを周知徹底するための教育(繰り返し教えて)
  • 組織で決めたプロセスの実践(うまくいくやり方で)
  • 実施しているプロセスの状況を計測して、より良くしていくための仕組み(やり方を常に見直して)
  • 上記計測結果やプロセス活動を上級管理者やその他の人が監査すること(実施状況をチェックする)
といったことを確立する事です。制度化することで初めて組織の力として継続していけることになります。このような状態になると、“みみちゃん(みんなで決める、みんなで守る、ちゃんと見直す)”ということが、組織で出来るようになります。これは、例えばプロセスをルール化する場合に、独断で決めるのではなく、組織の話合いの中で決める。そして、組織のみんなで決めたプロセスのルールは、同意したうえできちんと守る。最後に、そのルールに対して守れない事態が生じたならば、きちんと声を上げてみんなで見直すということを表しています(この部分の文章は、次の文献から引用)。

艸薙匠、猪野仁、石川隆、ソフトウェア開発プロセス改善活動、東芝レビュー Vol.61 No.1、2006.

SW-CMMは進化を続け、今では、CMMI Ver.2.0 となりました。このモデルは、私を成長させてくれただけではなく、多くの素晴らしい方々との出会いも作ってくれました。今後、CMMI Ver.2.0 をよく勉強し、みなさまにその内容を説明できるようにしたいと思っています。
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3. 2018年11月:ProMAC2018に初参加してきました!

タイのバンコクで開催された ProMAC2018 (12th International Conference on Project Management) に参加してきました。

ProMACは、プロジェクトマネジメント学会が主催する国際会議で、今年は12回目の開催でした。いつかは参加したいと思っていたのですが、タイミングが合わなくて参加できませんでした。今年、ようやく参加できました!

ProMACは、日本からの参加者が多い国際会議です。企業からは、日立製作所、日本IBM、NTTデータ、NEC、富士通からの参加が多く、大学からは、プロジェクトマネジメント学科を持つ千葉工業大学からの参加者が多いのが特徴です。3日間の中で、キーノートは5件、発表(質疑応答込みで20分)は8トラックに分かれて合計147件でした。また、発表と並行して、ワールドカフェとスペシャルレクチャーが実施されていました。

発表と質疑応答はもちろん英語です。英語に関して言えば、やはり個人差は大きいのですが、各参加者ともに準備はしっかりしているので、内容は分かりやすくまとまっているものが多かったと思います。

2日目朝のキーノートスピーカーは、千葉工業大学 プロジェクトマネジメント学科の谷本先生でした。タイトルは、"New Paradigm of Information Security Management in the Digital Transformation Era" で、セキュリティマネジメントに関する幅広い内容を分かりやすく説明されてました。時々、ジョークも交えながら、笑いを取っていたところはさすがでした!

私は、セッションチェア(座長)と発表があったので、ちょっと大変でした(^^;) 担当したセッションでは次の4件の発表がありました。
  • Scope Creep or Embrace Change? A Survey of the Connections Between Requirement Changes, Use of Agile, and Software Project Success
    Magne Jørgensen (SimulaMet)
  • Successful Experience from a "Lone Wolf" Project Using OODA
    Takumin Sugimoto (IBM Japan Ltd.)
  • Continuous Improvement in Team Performance with Scrum Practices in Waterfall Software Development
    Yuki Kimura (IBM Japan, Ltd.)
  • Proposal of Method to Evaluate the Scrum Team Objectively without depending on the Evaluator
    Yoshiki Sugiura (NTT DATA Corporation)
最初の発表者はノルウェーからの参加者でした。アジャイル開発と一般のV字型の開発で、仕様変更やリリースの回数がプロジェクトの成功とどのような関係があるのかを調査した内容でした。仕様変更とリリース回数が多いほど、アジャイル開発は成功し、V字型開発では失敗するという結果が得られていました。妥当な調査結果だと思いますが、しっかりとアンケート調査をベースにした分析が行われているので、今後、いろいろなところで引用できる論文だと思います。

2件目と3件目の発表者は、日本IBMの杉本さんと木村さんでした。お二人とも、英語が流暢で、とても分かりやすく、実践に裏打ちされた内容の濃い発表でした。まさに、今まさに、PMをバリバリ実践していることがよく分かりました。私も、お二人のようにスムーズに英語が話せるように頑張らなければ、と強く思いました。

4件目の発表者は、NTTデータの杉浦さんでした。スクラムがうまくいっているかどうかを、客観的に評価したいというモチベーションのもと、その仕組みを提案して実践した結果の発表でした。英語ももちろん上手だったのですが、それ以上に、実践した内容を伝えたいという熱意があふれていました。内容ももちろんよかったのですが、それ以上に、発表する時に一番大事なのものは何かを教えてくれた発表でした。

私は、"Practical Approach to Promote System Test Automation in a Large-Scale Organization" というタイトルで発表しました。内容としては、システムテストの自動化をターゲットにしていて、その自動化を推進するための技術、環境、体制、進め方などについてまとめたものです。私の発表したセッションの参加者はとても少なく、私の発表の時は数名だけでした(-_-) ですが、発表後は、NTTデータの木暮さん(今回も司会と発表の両方をしてました)や島中さん(ICTTI:Information & Communication Technology Training Institute)などから質問もあり、発表後の議論もできて、とても有意義でした。チェアの方からも、実践的でよい内容ですねと言われました。

島中さんと久しぶりに会ったのですが、今は、ミャンマーの ICTTI で働いていることを知りました。とても元気そうでした。いろいろな話ができて楽しかったです。以下は、ICTTI の紹介です。

Information & Communication Technology Training Institute (ICTTI) is a public school which has been established by University of Computer Studies, Yangon (UCSY) and Japan International Cooperation Agency (JICA) so that the graduates are able to get practical system development skills solving the problem of classroom lecture of the university.

期間中、たくさんの方々と交流ができ、また、他の大学の先生方と今後の研究の事などで意見交換もできて、とても有意義な3日間でした(私のよく知っている他大学の先生方も数名参加していました)。

来年 ProMAC2019 は、ミャンマーのヤンゴンで開催です。期間は、2019/11/12(火)~11/16(土)です。興味のある方、ぜひ、一緒に参加しませんか! 面白いですよ(^^)

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2. 2018年10月:ソフトウェアプロセス改善について

活動のサイトにも記載したのですが、9月にソフトウェア品質シンポジウム(SQiPシンポジウム)で、ソフトウェアプロセス改善に関するチュートリアルを行い、10月にある企業でソフトウェアプロセス改善をメインテーマとして講演をさせていただきました。その中で、ノイラートの舟 - Neuraths Boat - という詩を紹介する時もあります。
  • We are like sailors who on the open sea must reconstruct their ship, but are never able to start afresh from the bottom.
  • われわれは、大海の真中で舟を修理しながら航海を続けなければならない水夫みたいなものである。新しい船を最初から作り直せたらよいのだが、それはできない。
ソフトウェア開発の現状を見ると、保守や派生開発が多くの割合を占めています。組込みソフトウェア開発データ白書2017(該当箇所は33ページ)によると、415件の回答のうち、384件(93%)が改良(派生)開発であり、31件(7%)が新規開発でした。

ノイラートの舟の詩にあるように、新しいソフトウェアを最初から作り直せたらよいと思う時も多いと思いますが、それはできない、というのが実状です。そうなると、大切な事は、舟を修理しながら航海を続けること、すなわち、改善活動をしながらソフトウェアの開発を続けること、になります(かなり無理やりとい感じですが…)。

ソフトウェアのプロセス改善の定義は、「インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動(JIS Q9001)」です。一連の活動を実施する際には、「指定された最終結果を生み出すように設計された、作業活動に関わる“人、材料、エネルギー、機器、及び手順”の論理的編成(Quality Process Management by Pall, Gabriel A.)」が大切です。プロセスというと、直感的に「あ、手順のことだよね」と思い浮かぶと思いますが、手順はあくまでもひとつの要素であって、それ以外にも、そのプロセスを実践できるスキルや経験を持った人や機器(ソフトウェア開発で言えば、技術やツール)などがセットになって、初めて効果的・効率的なプロセスになります。

ソフトウェアの品質は、それを開発・維持するプロセスの品質に左右されるということは、ソフトウェアの開発に携わった方であれば実感されていると思います。「品質は工程で作り込め」「源流の清め」「後工程はお客様」といった格言(心構え)を聞いた事がある人は多いと思います。

プロセスは、手順、技術(ツール)、人から構成されています。ソフトウェア開発のQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)を達成するためには、プロジェクトの特性に合わせた手順を設計し、その手順を効果的・効率的に実施するための技術(ツール)を活用し、それらの技術や手順を使いこなせる能力を持つ人が必要です。

出典:開発のためのCMMI® 1.3版、4ページ、図1.1

派生開発が多いという現実において、過去の資産(プロセスとプロダクト)を活用しつつ、その資産に改善を加えることが大切ということがよくわかります。また、長年の積み重ねで、プロセスとプロダクトの資産が崩れかけていることも多く、部分的には、プロセスの見直しやプロダクトのリファクタリングなども必要になってきます。このような活動を計画的に、継続して実施するには、組織的な取り組みが必須になってきます。

能力成熟度モデルCMMIが盛り上がっていた時期(2000~2010年頃)には、いろいろな企業がプロセス改善活動に取り組んでいました(日本SPIコンソーシアム(JASPIC)の会員企業も30社を越えた時がありました)。しかし、2010年頃から、盛り上がりも冷めてきて、組織的にプロセス改善活動に取り組んでいる企業は減ってきたと思います(現在のJASPICの会員企業は17社です)。

これは、個人的な感覚なのですが、この1~2年、「プロセス改善活動に取り組みたいです」「プロセス改善活動を継続することが大切ですね」といった声を聞く機会が増えたように思います。

さまざまな開発環境や開発技術、開発ツールや管理ツールなどが提案され、実践されている中、それらをうまく組み込むには、ソフトウェア開発のための土台(基礎)の重要性が再認識されてきたのだと考えています。この土台を作ることが、組織やプロジェクトに最適な技術やプロセスの導入を可能にするということだと思います。

大学に移り7ヶ月が過ぎました。いろいろなイベントや会合に参加し、今まで一緒に活動してきた方々と話をする中で、プロセス改善の大切さや、それを伝えて広げることの重要性を再認識しました。これからも、ソフトウェアプロセス改善を研究テーマの一つとしてしっかりと追い続けていこうと思います。
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1. 2018年9月:大学でプロジェクトマネジメントを学ぶということ

2018年3月で東芝を退社し、4月から千葉工業大工に着任してから半年が過ぎました。何もかもが新しい事ばかりで、戸惑った事もありましたが、とても素晴らしい環境の中、先生方、職員の方々のサポートもあり、まずはうまくスタートできました。

今回は、プロジェクトマネジメント学科の3年前期で実施する、「プロジェクト・マネジメント演習」(以後、PM演習と書きます)をとおして、大学でプロジェクトマネジメントを学ぶということについて考えてみたいと思います。

PM演習では、3~4名からなるプロジェクトチームを作り、自分達で提案したシステムを開発します。期間は、4月~7月の約4ヶ月です。

PM演習で目指す事は、以下の3項目です。
  • PMのツール・技法を応用する技能を習得する
  • ITシステム開発の基礎力を習得する
  • ビジネス初級レベルの情報収集力・思考力・発信力を習得する
マイルストーンは、4月のキックオフ、6月上旬の中間発表、7月中旬の最終発表の3つです。各プロジェクトでは、課題を設定し、それを活動の中で取り組む必要があります。例えば、管理系の課題であれば「CCPM(*1)法導入」、「アジャイル開発の導入」などがあり、技術系の課題でれあば、「外部APIを利用した実装」、「デバイスを利用した実装」などがあります。また、各プロジェクトには、ユーザとシニアの役割として先生方が割り当てられます。ユーザは顧客側の責任者で、シニアは開発部門側の部長に相当する感じです。プロジェクトでは、いくつかの成果物を作りますが、すべて、シニアの承認後、ユーザに説明して、承認をもらう必要があります。

中間発表と最終発表の評価の観点は次のとおりです。
  • 中間発表の評価の観点
    • システム設計が理解できる
    • 計画・実績が合理的
    • チーム課題の実践方法が適切

  • 最終発表の評価の観点
    • システム価値が理解できる
    • 実績評価が定量的で合理的
    • チーム課題の実績考察が適切
プロジェクトマネジメント学科には12の研究室があり、それぞれの研究室は、経営システムのプロをめざす「経営システムコース」か、プロジェクト管理の実践力を身につける「プロジェクトマネジメントコース」のどちらかに所属します(Webサイトの「学びのポイント」を参照)。「プロジェクトマネジメントコース」の中では、さらに2つのグループに別れ、そのうちのひとつのグループである「ソフトウェアグループ」の研究室に所属する学生が、上記の内容で演習を行います。他のコース、グループも同じ期間で、同様の演習を行っています。

私の研究室の3年生は9名なので、3つのプロジェクトチームが約4ヶ月間に渡ってプロジェクトを実践しました。それぞれのチームともに特色があり、試行錯誤をしながらも、最後には何とか最終発表まで辿り着く事ができました。開発したシステムは、「ジョブ・マッチング・システム」、「学食のカロリー管理システム」、「教科書予約システム」の3でした。

「学食のカロリー管理システム」を開発したチームは、優秀賞を受賞しました。このチームの最終報告書は、次のリンクから参照してください。

「学生のための学食のカロリー管理システム」最終報告書

成果物として、要件定義書、プロジェクト憲章、プロジェクトマネジメント計画書、外部設計書・内部設計書、テスト計画書・テスト報告書、QCD評価報告書など、13個のドキュメントを作成しました。チーム課題は、「品質マネジメントにインスペクション技法を導入」として、内部設計書を対象にインスペクションを実施しました。

後半は、PHP と MySQL を使って Web サイトを構築します。しかし、1~2年生のころに基本的な事は学んでいるのですが、この部分はかなり苦戦してました。実際に自分の PC に環境を構築し(XAMMP や Visual Studio Code をインストールし、Github や Slack を使えるようにする)、そこでプログラミングとテストをして、Github にアップするという作業に習熟するまには、もう少し時間が必要と感じました。できれば、この演習とは別の枠で、きちんと習得しておく必要があるのかもしれません。

プロジェクトマネジメント技法をベースにして、要件定義から納品までを実践した学生達を見ると、一回り成長したと実感できました。プログラミングに関 しては、それぞれのメンバが担当した部分は数画面でしたが、自分で手を動かしてみるという事が大切だと思いました。

プロジェクトマネジメント技法は、実務での経験をしたあと習った方がよいという意見もよく聞かれます。もちろん、そのような側面もあると思いますが、ドロドロとした開発の裏事情や経験に囚われることなく、大学の頃に、その目的・考え方・技法を理解し、習得することには大きなメリットがあると思います。あるべき姿をきちんと理解し、それを発信できる事は、社会に出てから大きなアドバンテージになるはずです。

話題は変わりますが、プロジェクトマネジメント学会 2018年度 秋季研究発表大会で、京都光華女子大学の学生の方が、以下の発表をしていました。
  • 初年度に受講した専門科目としてのプロジェクト実践 -2年間のプロジェクト活動は教育効果があるのか-
  • 学生視点でプロジェクトマネジメントを学ぶ意義 -3年間の学生生活と就職活動-
どちらの発表者ともに、大学の1~3年の時期に実施したいくつかのプロジェクト(学内や地域のイベント、店舗で使ってもらうシステム開発など)をとおして、プロジェクトマネジメントを実践し、そこから理解できた事、学んだ事などを発表してくれました。プロジェクトマネジメントとして学んだ事が参考になり、さらに、活動計画、作業項目一覧、リスク管理などの技法を使いこなせるとともに、チームビルドやコミュニケーションマネジメントなどに注意を払う事がができたと発表していました。

プロジェクトを実施している時、問題や壁にぶつかった際には、「ミッションに立ち返りました」というコメントが特に印象に残りました。この時のミッションの例として、「文化を確立する」「商店街の活性化」の2つを挙げてました。技法も大切ですが、根幹には、そのプロジェクトの“ミッション”を、プロジェクトのメンバが共有できているかどうかが最も大切な事であることを再認識させてくれました。

京都光華女子大学のサイトに、“プロジェクトマネジメント学会「2018年度秋期研究発表大会」に参加しました”という記事が載っています。

今回の経験をベースに、来年度のPM演習が少しでも良いものになるように改善し、今後も継続・発展していけるようにしたいと思いました。そして、1年後、再び、PM演習の結果を報告したいと思います。

*1 : CCPM(Critical Chain Project Management:クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント)は、プロジェクトの各タスクの予算やスケジュールをぎりぎりに抑えて、その分、プロジェクト・バッファという余裕を設けておく管理手法。
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Last Update:2024/04/18